研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00858
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 昌子 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80214401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光化学 / 元素活用 / 光水素発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、貴金属触媒や稀少金属材料、超高純度材料に代わる新しい物質系の探索の観点から、ユビキタス元素活用に基づく光水素発生系の構築を目指している。この目的のため、平成25-26年度の領域内共同研究で取り組んだ成果に基づき、これをさらに発展させるために、平成27年度は、以下の3つの課題1)~3)に取り組んだ。 1)レドックス活性分子を用いた光水素発生反応探索と高効率化.先に見出したo-フェニレンジアミン等の芳香族アミン類による光水素発生反応の機構解明と高効率化を目指す。昨年度フロー型光反応容器(信州大学、宇佐美久尚教授との共同研究)を用いて、フェニレンジアミンを殺菌灯(254 nm)で直接励起することで光水素発生量が大幅に増大することを見出した。 2)量子ドットを光増感剤とする3d金属錯体光水素発生系の構築.可視光による水の分解へのアプローチとして、量子ドット(CdSe)を光増感剤とする3d金属イオンによる可視光応答型光水素発生系を構築した。反応は、金属イオン(Ni2+, Fe2+等)のほかに、量子ドット保護剤であるチオラートの種類に大きく依存することが明らかとなり、表面保護配位子による表面状態の違いをXPS等で明からにした。 3)メソポーラス有機シリカを活用した金属錯体触媒系の安定化と集積化.錯体触媒の安定化と効果的な光捕集効果を期待して、昨年度、メソポーラス有機シリカ(bpy-PMO)に光機能性金属錯体の担持した系の共同研究(豊田中研、稲垣伸二博士[A01班])に取り組んできた。昨年度、集積により発光状態が制御可能な白金(II)錯体および銅(I)錯体の担持に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1)の水素発生は、アミンのN-H光開裂で生成したラジカルにより誘起される溶媒分子からの水素引き抜きにより進行すると考えられる。条件の検討を行っている途中で、実験者の移動があり研究は中断を余儀なくされた。28年度は最終年度でもあり研究のまとめるために再現性をとる実験を早急に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本課題の最終年度となるため、研究を加速し、3課題とも研究をまとめる方向で推進する。 課題1)レドックス活性分子を用いた光水素発生反応探索と高効率化については、上記のとおり、再現性実験を繰り返しながら条件の最適化と光水素発生機構の解明を行う。 課題2)量子ドットを光増感剤とする3d金属錯体光水素発生系の構築に関しては、表面保護配位子の効果を正確に把握すべく、共同研究(関西学院大学、橋本秀樹教授[A01班])により、過渡吸収測定による励起状態の電子移動過程を詳細に追跡する。 課題3)メソポーラス有機シリカを活用した金属錯体触媒系の安定化と集積化においては、白金(II)錯体の集積化が可能であることの手がかりを得たので、今年度は、本系の集積状態および構造の解明と、集積状態制御による発光状態の制御、および水素発生反応の効率化への適用に取り組む。
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