公募研究
側鎖に電子供与性分子(ポルフィリン)および電子受容性分子(ナフタレンジイミド)を導入した電子・光活性アミノ酸を合成し、これらを交互に連結することによる人工ポリペプチドを合成した。集合化挙動について検討した結果、βシートを形成することを明らかにした。また、光照射により電子供与体から受容体への電子移動がおこり、電荷分離状態が形成する事を確認した。また、電荷分離型ペプチドβシートを用い、酸化グラフェンの負電荷部位とβシート片面に集積したカチオン性部位との結合により、酸化グラフェンーペプチド複合体を形成した。βシートのもう一方の面に金属ナノ粒子を結合することにより、触媒機能や光電荷分離機能を持つグラフェンーペプチドー金属複合体を形成した。これらの複合体を用いて光触媒効果について検討した結果、紫外線照射による有効なローダミンの光退色を確認した。さらに、光閉じ込めによる共鳴発光特性を示す共役系高分子マイクロ球体を用い、長距離励起エネルギー移動について検討した。まず、電子供与製ポリマーと受容性ポリマーの混合によるブレンド球体の形成を検討した。球体内FRETが効率的に起こることから、これらのポリマーが同一球体内に双溶していることを確認した。さらに、複数の球体を1次元的に連結し、その一端をレーザー励起することで、球体内部で発生し閉じ込められた発光が、複数の球体間を伝播することを確認した。さらに電子供与製球体から受容性球体に伝搬する際に球体間エネルギー移動により発光波長が変化することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した3つのテーマいずれもおおむね順調に進行している。特に、ペプチドーグラフェンー金属ナノ粒子の複合材料に関しては、光触媒効果も観測されていることから、今後、大きく発展していけると考えられる。また、ポリマー球体による光捕集に関しても、球体内および球体間におけるエネルギー移動を確認し、今後広範囲の光捕集に関する研究に発展できると考えられる。
[1] ペプチドβシート電荷分離系:作製した人工ペプチドβシートを用いて、光照射下の導電挙動について確認する。具体的には、光誘起電子移動効率(蛍光消光)、電荷分離状態の寿命(時間分解蛍光)や生成した電荷キャリアの輸送特性(時間分解マイクロ波電導度測定)、光起電デバイス構築による光電変換特性の測定を行う。また、電界効果トランジスタにより両極性トランジスタとしての作動特性を評価し、電子とホールのキャリア移動度を見積もる。[2] グラフェンーペプチド複合体:金微粒子を担持したペプチドー酸化グラフェン複合体を用い、微粒子による触媒機能について検討する。また、酸化グラフェンの還元により、金微粒子を担持しつつグラフェンの分散状態を実現し、高い触媒効率を実現する。ポルフィリン担持ペプチドー酸化グラフェン複合体に関しても、光照射に伴うポルフィリンー酸化グラフェン間の電荷分離状態の形成について検討を行い、広範囲における光捕集特性を実現する。[3] 高分子マイクロ球体光捕集系:マイクロ球体間の超長距離エネルギー輸送(光閉じ込めと光伝達)により、特定のπ共役高分子マイクロ球体へ光エネルギーを集光し、超高密度励起状態を実現する。広い面積への弱い光照射による効率的な光捕集により、高いQ値を示すWGM発光および誘導放出によるレーザー発振を実現する。また、酸化グラフェン等の高屈折率2次元層状物質で被覆したπ共役高分子マイクロ球体を用いた、広範囲光捕集について検討する。酸化グラフェンーπ共役高分子間における電荷分離状態の形成について検討し、長寿命な電荷分離状態を用いた光化学(触媒)反応を実現する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (3件)
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http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~yamamoto_lab/Homepage_Japanese/toppu.html