公募研究
今年度は、本研究の基盤であるジピリン亜鉛錯体ナノワイヤ・ナノシートのモデル化合物となる単核錯体に関して、大きな進展が得られた。(1) 強発光性・円偏光発光能を有する単核錯体の合成(ジピリナト)(ビスオキサゾリン)亜鉛錯体が、アキラルなジピリン配位子部分から円偏光発光能を示すことを見出した。キラルなビスオキサゾリン配位子がジピリン配位子に対してパイパイ相互作用を示すことを単結晶X線構造解析から明らかとした。その結果アキラルなジピリン配位子にもキラリティーが誘起されることを、同じく単結晶X構造解析およびCDスペクトルにより突き止めた。また、円偏光発光測定により円偏光を示すことが、また絶対蛍光量子収率測定により、通常のジピリン錯体よりも遥かに量子収率が大きいことを見出した。(2) 強発光性ビス(ジピリナト)亜鉛錯体の開発対称なビス(ジピリナト)亜鉛錯体は通常、発光能力が弱い。しかしながら、互いに異なるジピリン配位子を導入(非対称化)することで、発光効率が大きく上昇することを2012年に見出した。本研究では、発光のバリエーションの拡張を目指し、8種類の非対称誘導体の合成を行った。いずれの非対称分子も対応する対称錯体に比べ遥かに強く発光し、特に極性溶媒中での性能に大きな違いが観測された。そのうちの一つはBODIPY色素に匹敵する特性を示した。発光色としても、可視から近赤外領域まで達する多彩な発光色を実現した。
1: 当初の計画以上に進展している
上記に挙げたジピリン亜鉛単核錯体の研究成果に加え、ジピリン亜鉛錯体ナノワイヤ・ナノシートに関しても研究成果が得られている。ナノワイヤに関しては発光性の増強および円偏光発光機能の付与に成功し、ナノシートに関しては光電変換効率と光応答波長の改善に成功している。次年度には論文発表および報告ができる見込みである。
前項に挙げた通り、ナノシート・ナノワイヤに関しても順調に研究が進展している。今後は単核錯体の研究成果を融合し、更に高機能性のナノシート・ナノワイヤの構築に取り組む。また、他の金属錯体をモチーフとする光機能性ナノシートの合成にも着手し、研究成果を挙げつつある。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 14件)
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