研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00868
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
柘植 清志 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (60280583)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー集約 / アンテナ効果 / 発光性配位高分子 / 銅 / 銀 / d10 / 混晶 |
研究実績の概要 |
ピリジン系架橋配位子Lを持つ一連の発光性ハロゲノ銅(I)および銀(I)錯体[M2X2(PPh3)2(L)]は、共通のXやLを持つ場合に同形結晶を生成する傾向がある。これまでに、この構造特性を利用して、混合型の発光性配位高分子を合成し、発光ユニット間でのエネルギー移動やエネルギー集約が進行することを明らかにしてきた。本研究では、銅および銀混合型配位高分子の合成をさらに進め、1.配位高分子鎖中でのエネルギー移動の方向を決定する要因を解明し、2. 配位高分子鎖の末端修飾および鎖状や層状構造の{MX}nユニットを用いることにより、集約した光エネルギーを利用する方法を開発する。 本年度は、新たな混晶系として4,4’ビピリジン(bpy)と4,4’-ビピぺリジン(bipip)を架橋配位子として持つ混合型銀(I)錯体の合成を行った。bipipを架橋配位子とする銀単一錯体の合成法を確立したのち、混合錯体の合成を行った。これらの錯体では、主にbpyユニット由来の発光が観測されることがわかった。一方で混合錯体においては、bpyの比率が小さい場合に発行帯の振動構造の明確化が見られた。この現象は、-50℃程度までbpy単一錯体を冷却した際に観測される挙動であり、混晶化によりエネルギー移動ばかりでなく発光励起状態が変化することが明らかになった。 また、配位高分子の末端修飾として、約0.2mm角の[Ag2I2(PPh3)2(bpy)]の単結晶を、CuI, PPh3, bpyを含む溶液に浸漬したところ、結晶表面が銅錯体に特徴的な黄色の発光を示した。また、顕微鏡で観察した所、事実上修飾されていない結晶面と主に修飾されている結晶面があることがわかった。単結晶構造解析による面指数の決定により、主に修飾されている面は配位高分子鎖の端点が現われている面であり、配位高分子の末端修飾が進行している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、銅や銀の発光性配位高分子が同型構造を取ることを利用して混晶化を行い、混合型の発光性配位高分子を合成し、ユニット間でのエネルギー移動を利用して利用してアンテナ効果を持つ発光性錯体を合成し、光エネルギーの利用を行う。本年度の研究では、bipipとbpyを配位子とする新規の架橋配位子混合型錯体を合成した。これにより、発光性銀(I)錯体でも架橋配位子の混合化が可能であることが示された。また、この結晶の発光スペクトルの検討により、混晶化が温度変化と同様の影響を及ぼす例がある事を明らかにした。また、銀単一錯体をCuI, PPh3, bpyを含む溶液に浸漬することにより、結晶表面が銅錯体で修飾されることも示した。顕微鏡観察により、修飾を受けやすい面があることを明らかにし、配位高分子鎖の末端が主に修飾される可能性があることも示した。このため、おおむね順調に研究は進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も計画に基づき研究を進める。本年度、新規に合成した架橋配位子混合型銀錯体を含め、架橋配位子混合型錯体の寿命測定などによりエネルギー移動と配位子の組み合わせの関係を検討する。また、異形混晶系についても合成および物性の検討を進める。末端修飾法に関しては、本年度検討した、[Ag2I2(Ph3)2(bpy)]と[Cu2I2(PPh3)2(bpy)]の組み合わせについて、浸漬時間の及ぼす影響などをさらに検討し、表面修飾した結晶の発光スペクトル、発光寿命測定などを行い、末端へのエネルギー集約についてさらに検討する。また、修飾する結晶として発光性の弱いbipipの単結晶を用い、その上に他の錯体の結晶成長を試みる。これらの錯体についても、物性測定を行う。また、光反応についても検討する。
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