研究実績の概要 |
半導体ナノ粒子(量子ドット)は、量子サイズ効果によってその光吸収特性を変調でき、さらに粒子中の光励起電子・正孔がバルク半導体よりも大きな還元力・酸化力をもつことから、高活性光触媒としての利用が期待されている。これまでに私たちのグループでは、低毒性元素から構成されるZnS-AgInS2 固溶体((AgIn)xZn2(1-x)S2, ZAIS)について、球状ナノ粒子を精度良く合成することに成功した。そこで本研究では、さらに異方性形状をもつZAIS ナノ粒子を作製し、粒子のサイズ、形状および組成が水素発生反応に対する光触媒活性に及ぼす影響を評価した。異方形状ZAISナノ粒子は、各金属酢酸塩と硫黄源(硫黄, 1,3-ジブチルチオ尿素)を、オレイルアミン(OLA)と1-ドデカンチオールの混合溶媒中に溶解させ、150~250℃で反応させることによって作製した。得られたZAISナノ粒子は、ロッド形状粒子およびライス形状粒子の混合物であった。サイズ選択的沈殿によって得られた粒子を形状ごとに分離したところ、ロッド形状粒子(長さca.40×幅ca.5 nm)およびライス形状粒子(長さca.16×幅ca.9 nm)に分離することに成功した。一定の組成(x= ca.0.4)をもち、形状が異なるZAIS粒子を光触媒として水素発生反応を行ったところ、粒子形状に関わりなく光照射時間とともに水素発生量が直線的に増加した。しかし、光触媒活性は粒子形状に依存して大きく変化し、ライス < 球 < ロッド の順で光触媒活性が増大した。これは、粒子表面状態、すなわち粒子表面に露出している結晶面の違いが光触媒活性に大きく影響することを示唆する。このように、ZAIS粒子の光触媒活性は、組成に加えて粒子形状によっても大きく変化することがわかった。
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