研究実績の概要 |
太陽光の高効率なエネルギー変換を目指して、近赤外領域に光吸収をもつ半導体ナノ粒子の新規合成が盛んに行われている。なかでもCu2ZnSnS4(CZTS)は、高い吸光係数と狭いエネルギーギャップ(Eg)(1.4 eV)をもち、さらに安価・低毒性な元素のみから構成されることから、次世代光エネルギー変換材料として注目されている。近年、このCZTSとAg2ZnSnS4(AZTS)とのバルク固溶体((Cu1-xAgx)2ZnSnS4, CAZTS)が、水素生成反応に対して高い光触媒活性を示すことが報告された。そこで本研究では、CZTSとAg2ZnSnS4(AZTS)との固溶体からなるナノ粒子を合成し、その近赤外領域における光吸収特性を評価した。 CAZTSナノ粒子は、対応する金属のジエチルジチオカルバミン酸塩をオレイルアミンに加え、窒素雰囲気下300℃で熱分解することで作製した。得られた粒子をFTO基板上に固定し、さらに窒素雰囲気下300℃で焼成することで、CAZTSナノ粒子薄膜を得た。 液相合成により生成したCAZTSナノ粒子は平均粒径約4~8 nmの多角形粒子であり、そのXRDパターンはケステライト構造CAZTS固溶体に一致した。用いる金属前駆体のCu/Ag比を変化させることで、得られた粒子の化学組成を0≦x≦1の範囲で制御することができた。粒子のEgは、組成xの増加によって1.1 (x = 0)から1.8 eV(x = 1)に連続的に変化した。 FTO電極上に製膜したCAZTSナノ粒子薄膜に光照射すると、いずれの場合もカソード光電流を生じ、その大きさはより負な電位を印加することで増大したことから、p型半導体電極に類似した光応答といえる。一方、AZTSナノ粒子を担持した電極では、より正な電位の印加によりアノード光電流が増大し、n型半導体特性を示した。
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