公募研究
近赤外領域に吸収帯および発光をもつ化合物は、生体活動を可視化するためのイメージング材料の中でも生体の吸収が少ない領域(生体窓)を利用できるため、光を用いた生体非侵襲材料として望まれている。本研究では、π共役系の拡張と分子内電荷の非局在化を組み合わせることにより、キサンテン系色素よりさらに長波長に吸収と発光を示す化学的に安定な新規近赤外吸収・発光分子の構築を目指した。キサンテン系色素であるフルオロンのπ共役系を拡張した分子1の合成は達成され、吸収スペクトル測定および発光スペクトル測定を行った結果、分子1のアニオン(1-A)は近赤外領域の778 nmを極大とする吸収および809 nmを極大とする蛍光を示すことを明らかにできた。フルオロンのアニオンと比較を行うと、それぞれ約250 nm長波長シフトしていることが示された。しかしながら、この分子1の脱プロトン化体は、室内光、酸素雰囲気下で速やかに退色し、またわずかな水分によっても求核攻撃を受けやすいことが明らかとなった。このため、13位にある求核攻撃を受けやすい炭素を、フェニル基の両オルトにフッ素を導入することで立体的に保護し、化学的な安定性の確保を検討した。アセトニトリル中、DBUにより脱プロトン化し、吸収・発光スペクトル測定を行った結果、アニオンF2-1-Aは分子1よりも若干長波長シフトし、近赤外領域の802 nmを極大とする吸収および837 nmを極大とする蛍光を示すことが明らかとなった。アニオン1-AとF2-1-Aについて安定性の評価を行った結果、F2-1-Aは1-Aと比較してDMSO溶液中、酸素雰囲気下、光照射条件において2倍程度安定であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
人工光アンテナ分子を合成して、従来のアンテナ分子では不可能であった可視から近赤外領域までの高効率光捕集を達成することを目的とし、π拡張型フルオロンの合成に成功した。π共役系を高いアスペクト比を保ったままで拡張することによって、比較的少ない芳香環ユニット数で吸収波長の長波長化が可能であることを明らかにし、発表後すでに3件の共同研究(国内2件、国外1件)に繋がっている。有望な分子であり、国内特許も出願中である。
いよいよ、中央のベンゼン環に硫黄と窒素を導入した、メチレンブルーの有機合成化学的改変をテーマとする。ヘテロ原子を導入することによって、π電子共役系の変化に対して分子が柔軟な対応をすることが予想される。更に基本的には水溶性で有り、カウンターアニオンを変化するだけでメディアに対する溶解度も劇的に変わるはずである。両サイドの置換基も変化させる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Chem. Sci.
巻: 7 ページ: 1309-1313
10.1039/C5SC03604F
J. Am. Chem. Soc.
巻: 138 ページ: 1065-1077
10.1021/jacs.5b12532
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 55 ページ: 2693-2696
10.1002/anie.201508919
巻: 55 ページ: 2815-2819
10.1002/anie.201511151
Chem. Commun.
巻: 52 ページ: 4872-4875
10.1039/C6CC00237D
Tetrahedron Lett.
巻: 56 ページ: 3804-3808
10.1016/j.dyepig.2015.06.029
J. Mater. Chem. C
10.1016/j.tetlet.2015.04.080
巻: 54 ページ: 8175-8178
10.1002/anie.201502466
Chem. Asian J.
巻: 10 ページ: 2337-2341
10.1002/asia.201500597
巻: 56 ページ: 5564-5567
10.1016/j.tetlet.2015.08.044
巻: 54 ページ: 6292-6296
10.1002/anie.201500972
http://mswebs.naist.jp/LABs/env_photo_greenmat/Yamada_Research_Group/index.html