研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00877
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片岡 祐介 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20725543)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素生成 / 人工光合成 / 錯体化学 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、ロジウム二核錯体のボトムアップ化(多核化)による高機能触媒活性発現の魁として、水の光還元反応に安定な新規ロジウム四核錯体を創成し、それらの水素発生触媒能を評価する事を目的としている。具体的には、既に優れた水素発生触媒である事が知られているロジウム二核錯体をジカルボン酸系鍬形配位子で連結したDiemer-of-Dimer型構造と称せるロジウム四核錯体を開発し、それらのロジウム四核錯体の可視光照射下における光水素発生効率を調査すると同時に、分光学的測定、電気化学測定及び、密度汎関数計算から水素発生反応メカニズムを明らかにする事を目指している。平成27年度の成果として、申請者は、2種類のジカルボン酸系鍬形配位子{1,8-Anthracene dicarboxylic acid (Ant)または2,7-di-t-Bu-9,9-dimethyl xanthene-4,5-dicarboxylic acid (Xan)}をロジウム二核錯体に連結したロジウム四核錯体{[Rh4(Ant)(O2CCH3)6]及び[Rh4(Xan)(O2CCH3)6]}を開発し、それらの光水素発生効率を確認した。その結果、従来のロジウム二核錯体に比べ、1.5倍以上の極めて優れた水素発生効率を示す事が明らかになった。また、分光学的測定、電気化学測定及び、密度汎関数計算の結果からロジウム四核錯体は、ロジウム二核錯体と同様に三電子還元機構で水素発生を行っている事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酢酸ロジウム二核錯体[Rh2(O2CCH3)4]を1,8-Anthracene dicarboxylic acid (Ant)または2,7-di- t-Bu-9,9-dimethyl xanthene-4,5-dicarboxylic acid (Xan)で連結した2種類の新規ロジウム四核錯体{[Rh4(Ant)(O2CCH3)6]及び[Rh4(Xan)(O2CCH3)6]}の合成に成功し、単結晶X線構造解析から分子構造を明らかにする事に成功した。得られたロジウム四核錯体は、2つのロジウム二核ユニットが密に隣接した「Dimer-of-Dimer型構造」を形成している事が確認できた。また、電気化学測定からどちらのロジウム四核錯体も、水素発生能を有する事が確認された。シクロメタレート型イリジウム錯体[Ir(ppy)2(bpy)]PF6を光増感剤として使用した際、可視光照射下で目視できる程の極めて高効率な水素生成を示した。[Rh4(Ant)(O2CCH3)6]及び[Rh4(Xan)(O2CCH3)6]の触媒回転数(TON per Rh2)は、15367と11361に達した。 また、ビピリジンが配位したハーフパドロホイール型ロジウム二核錯体やターピリジンが配位したアンカー型ロジウム二核を上記の配位子で連結させる事にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきたロジウム四核錯体の水素発生メカニズムを分光学的測定、電気化学測定および密度汎関数計算から明らかにする。また、AntおよびXan配位子をロジウム四核錯体に更に連結させる事で、ロジウム二核錯体が3つ連結したロジウム六核錯体の合成を目指す。
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