研究実績の概要 |
レチナールタンパク質(○○ロドプシン)は、幅広い生物が共通にもつ光受容体タンパク質である。7本の膜貫通αヘリックスの中央部に、発色団レチナールが結合し、イオン輸送,情報伝達などの多彩な機能を発現する。本研究では、これまでのタンパク質側に着目する研究から、発想を転換し、発色団レチナールに着目した。すなわち、有機合成した非天然発色団をアポタンパク質に取り込ませ、機能の変換や拡張を行うことで、機能のより深い理解や有用な光操作ツールの開発につなげることを計画した。
本年度は、以下の2つの研究課題を設定し研究を行った。 (1)レチナールタンパク質に光捕集系アンテナ色素を結合させ、エネルギー移動により効率的な光機能性を付与する:高度好熱菌由来の極めて安定な光駆動H+ポンプ・サーモフィリックロドプシン(TR)について、X線結晶構造解析によりその分子構造を解明した [1]。その結果、TRには推定カロテノイド結合部位が存在することが明らかとなり、吸収特性の拡張の可能性が示された。(2)レチナールに変えて、有機合成発色団を結合させ、機能性の変換や拡張を行う。:炭素鎖を延長したレチナール誘導体を合成(神戸薬科大学・和田昭盛教授からの供与)し、光駆動H+ポンプ・アーキロドプシン3のアポタンパク質に導入した。その結果、通常のレチナールを持つときとは逆向きにH+をポンプする光受容タンパク質を創成することに成功した。このような機能は天然には存在しない新規のものであり、現在、その分光学的特性について解析を進めている。
[1] Tsukamoto,,,,, & *Sudo (2016) J. Biol. Chem. in press.
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