研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00879
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊田 進太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70404324)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | CaFe2O4 / 光電気化学的水分解 |
研究実績の概要 |
太陽光の可視光領域の光を利用して水を水素と酸素に分解できる光触媒がいくつか報告されるようになってきており、このような人工光合成による 水素製造も研究室レベルから産業化を見据えた研究が始まっている。しかしながら、太陽光エネルギーを水素に変換する効率は依然と低く、現在と同価格の水素を提供するためには大きなプレイクスルーが必要とされている。本研究ではn型半導体であるFe2O3電極とp型半導体であるCaFe2O4(CFO)電極を用いて水の完全分解を検討した。 NaOH水溶液中で作製したFe2O3電極とCaFe2O4電極を短絡させ、両電極表面にXeランプを照射すると、約9μAの短絡電流が観察された。両電極を短絡させ、実際に無バイアスで水の光分解を行った場合、水素の生成量は25時間経過時まで時間に対しほぼ直線的に増加した。一方、38時間以降は、生成量が大きく低下した。また、酸素の生成は確認できなかった。反応後の電極の組成を分析するとCaが抜けていることが確認された。おそらく、活性の低下は電極の光溶解によるものと考えられる。そこで、CFO電極の表面に保護層として20-100nm程度のTiO2層の導入を検討した。TiO2電極はパルスレーザーデポジション法で作成した。TiO2コートにより、CFO電極の光応答性は低下したが、光還元電流の減少は大きく抑えることができた。15時間後の光電流を比較するとTiO2をコートしたCFO電極の方が1.5倍程度大きな光電流を示すことが分かった。つまり、薄いTiO2層を表面に導入することで電極の劣化を抑えられることが分かった。今後は、開発したTiO2コート酸化鉄系半導体電極を用いた無バイアス水光分解を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった鉄系酸化物半導体を用いた無バイアス水分解は、電流値は低いが無バイアスで水素が生成することに成功してるたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は欠陥の少ないCaFe2O4単結晶を電極に用いることで再結合を抑制し光電変換効率の向上を目指す予定である。その他電極の安定性向上と助触媒担持効果について調査する予定である。これまでの研究でCaFe2O4は電極反応が進行するにつれCaが抜け出すといういう安定性に関する大きな課題があった。そこで今後は電極表面を動作環境で化学的に安定なTiO2でコートすることで安定性の向上を目指す予定である。また、太陽電池のデバイスシュミレーターを修正した光電気化学反応シミュレータ-を用いて光電気化学的水素生成の電流-電圧特性を計算し、その結果を実デバイスにフィードバックしながら変換効率の向上を目指す予定である。
|