研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00880
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
白上 努 宮崎大学, 工学部, 教授 (60235744)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工光合成 / 金属ポルフィリン / 可視光 / 水の酸化 / 典型元素 / 過酸化水素 |
研究実績の概要 |
前年度では、酸化チタン(TiO2)で修飾されたITOガラス電極表面上に、軸配位水酸基および側鎖にカルボキシル基を持つゲルマニウムポルフィリン錯体(1)を吸着させた複合電極(1/TiO2/ITO)(陰極)と白金電極(陽極)および電解質水溶液から構成される電池において、陰極側へ可視光照射すると、水の二電子酸化生成物である過酸化水素が生成することを見いだしている。本反応は、過酸化水素の生成に対するターンオーバー数が9であることから、触媒的に反応が進行し、さらにファラデー効率が90%であり、ほぼ定量的に進行することがわかった。しかし、過酸化水素の発生効率が依然として低いことが問題であった。 本年度の研究では、本反応の高効率化を目指すために、以下の2つの戦略で実験計画を立てて、次のような成果を得た。 (1)これまでの研究から、過酸化水素の生成には、1の軸配位水酸基がプロトン解離することによって生成するGe-オキシル錯体が水の酸化の鍵中間体になることがわかっているので、高効率化のためには、塩基性条件下で反応する必要がある。そこで、TiO2との吸着力が塩基性条件下でも強いボロン酸基を導入した1を新たに合成することに成功し、pH=12においても反応が進行し、100%のファラデー効率にて過酸化水素が得られた。 (2)本反応の駆動波長の広領域化によって、過酸化水素の生成効率の向上を目指した。1への励起エネルギーが可能なフルオレセイン色素およびBDPY色素を、1と共にTiO2表面上へ共吸着させた電極を調整し、色素のみが吸収できる波長の光を照射すると、過酸化水素の生成が認められた。これは、色素から1への励起ネネルギー移動が進行し、1が増感されたためと考えている。さらに、疑似太陽光を照射すると、色素を導入することによって、約3倍過酸化水素生成量が増加することもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩基性条件下において、TiO2への吸着力が弱いカルボキシル基に代わって、吸着力の強いボロン酸基を導入した1の合成に成功し、塩基性条件下での過酸化水素の発生を確認している。また、別の有機色素を導入することによる駆動波長の広領域化についても、1と有機色素をTiO2表面上へ共吸着させることで達成することができた。したがって、当初の研究実施計画で記載した内容は、ほぼ達成されていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの反応系では、外部印加電圧(バイアス)はゼロにして行ってきたが、過酸化水素の生成効率の向上のために、バイアスをかけた実験を計画している。 電極系に加えて、TiO2粉末系での水の酸化反応を検討する。 駆動波長の広領域化においては、有機色素と1の吸着量の制御等、定量的な扱いをして、疑似太陽光下での過酸化水素の生成効率の向上を目指す。
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