軸配位水酸基を持つゲルマニウムポルフィリン錯体(Getpp)が、水分子の過酸化水素への二電子酸化反応において、反応効率の向上が課題となっている。前年度からの継続で、次の2つの観点から高効率化へのアプローチをしている。 (1)鍵中間体であるGe-オキシル錯体の生成に必要な軸配位水酸基のプロトン解離過程の促進 (2)TiO2表面におけるGetppに対する光捕集色素との共吸着系の構築による駆動波長の広領域化 本年度の研究では、上記の2つの戦略の実験計画に基づいて、以下の研究成果を得ることができた。 まず、pH=12の塩基性条件下で、過酸化水素をファラデー効率100%にて得ることに成功した。しかし、塩基性によって、TiO2の伝導帯電位が卑側へシフトするため、Getppからの電子移動効率が低下し、全体の生成効率が向上しない課題があった。そこで、外部電圧(200 mV)を印加した結果、過酸化水素の生成量を2倍に向上させることに成功した。さらに、Getppのフェニル基へ電子供与性置換基(メチル基およびt-ブチル基)を導入したGetpp誘導体を用いることで、TiO2への電子移動を促進し、過酸化水素の生成量を増加させることにも成功した。次に、フルオレセイン(CF)等の光捕集色素との共吸着系において、これまでTiO2電極系での反応を検討してきたが、今回、TiO2粉末系において、電極系と同様にCFとGetppを共吸着させた触媒粉末を調製し、光照射した結果、過酸化水素の生成が認められ、そのターンオーバー数(TON)は、Getpp単独吸着の時(TON=4)よりも、CFとの共吸着によって飛躍的に向上する(TON=216)ことを明らかにした。
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