研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
15H00883
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金クラスター / 精密合成 / 水分解光触媒 / 高活性化 / 助触媒 |
研究実績の概要 |
水分解光触媒は太陽光と水から水素を生成することができるため、クリーンなエネルギー材料として注目を集めている。我々はこうした水分解光触媒反応を効率よく進行させるために、微細なチオラート保護金クラスターを助触媒(反応サイト)の前駆体として用いる研究を行っている。本研究では、様々なサイズのクラスターおよび異原子ドープクラスターの水分解光触媒上への精密担持に取り組み、その水分解活性について調べた。本実験で助触媒の前駆体として用いた疎水性チオラート保護金クラスター(Au25(SR)18、Au38(SR)24、Au144(SR)60、Au329(SR)84、Au24Pd(SR)18、Au25-nAgn(SR)18、Au25-nCun(SR)18)は液相還元法により合成した。しかし、これらのクラスターは光触媒上へ吸着させる際に必要な親水性配位子を持たない。そこで、クラスターを効率よく吸着させるために、配位子交換反応により親水性配位子である4-メルカプト安息香酸(p-MBA)を複数個クラスターに導入する、新たな吸着方法を用いた。サイズごとの活性に注目してみると、Au25(SR)18を前駆体に用いた際に最も高い活性を示すことが分かった。これは助触媒サイズの微細化により反応表面積が増大したためと考えられる。一方で活性は、前駆体に用いるクラスターサイズの増大と共に連続的に低下するのではなく、Au144(SR)60を前駆体に用いた際に一度向上し、その後再び低下した。以上の結果より、助触媒の微細化による光触媒活性の向上は、単純に反応サイトの表面積の増大だけでは説明がつかない、他の要因も含んでいる可能性が示唆された。また異原子ドープクラスターについては、Pdをドープすることで水分解活性を向上させられること、一方でAgやCuのドープは活性を低下させることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の達成目標は以下の通りである。 1)水分解半導体光触媒上に、「原子精度で組成制御された」「1nm程度の粒径の」「一連の化学組成の」金属ナノクラスターを水分解光触媒上へ担持させる。 2)得られた光触媒の触媒活性を測定することで、担持金属ナノクラスターの化学組成と光触媒活性の相関を「原子精度にて」明らかにする。 3)得られた光触媒の構造解析を行うことで、電子/幾何構造が光触媒活性に与える影響を明らかにする。 4)以上の研究を通して、光触媒活性向上に対するキーパラメータを炙り出し、高活性水分解光触媒創製に対する新たな設計指針を打ち立てる。 初年度の研究により、1)と2)を達成した。これは当初の計画通りであるため、本研究課題は順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電子/幾何構造が光触媒活性に与える影響について知見を得るため、担持金属ナノクラスターの電子/幾何構造を、拡散反射分光、X線光電子分光、X線吸収端近傍構造測定などにより評価する。しかしながら、構造—機能相関について深い理解を得るためには、より最先端かつ高分解能な実験および計算を用いて担持金属ナノクラスターの構造評価を行うことが不可欠である。そこで、計測や理論計算を得意とする本領域の研究者と協力し、超高分解能ナノ計測や高精度計算などを行う事で、厳密な構造情報を得ることを目指す。得られた結果をもとに、光触媒活性向上に対するキーパラメータを炙り出し、高活性水分解光触媒創製に対する新たな設計指針を打ち立てる。
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