プラズマ誘起の活性種が細胞に到達した際に細胞膜にどのように作用し、どうやって細胞膜を通り抜けて細胞内に到達するのか、その機序と膜内分子組成・膜内構造依存性を明らかにすることを目的とした。今年度は下記の課題に取り組んだ。 1). 大気圧プラズマ照射による活性種と生成物:誘電体バリア放電(DBD)装置を用いた支持脂質二重膜(SLB)へのプラズマ照射によって起きる小孔形成および膜流動性の低下の原因が、プラズマ由来の酸素活性種による脂質の酸化であることを前年度に提案した。この機構を実験的に裏付けるために、蛍光プローブを用いた活性種の同定と、質量分析法による酸化生成物の検出を行った。種々の活性酸素種に対して異なる反応性を示す蛍光色素分子(HPF、APF)を、SLBと同じ緩衝液に溶解し、SLBへの照射と同条件でDBD装置による大気圧プラズマ照射を行った。HPFとAPFの反応効率の比から、主に生成している活性種がOHラジカルであることが示された。生成物の同定については、これまでSLB形成に用いてきたリン脂質のdioleoylphosphatidylcholine (DOPC)でベシクル懸濁液を調製し、大気圧プラズマ照射を行った。質量分析ではプラズマ照射後にDOPCよりもm/eが16大きいフラグメントが検出されたことから、DOPCが酸化されていることが示された。 2). 巨大単層膜ベシクル(GUV)へのプラズマ照射水添加:あらかじめプラズマジェットを照射した純水(PTW)をGUVに添加し、比較的長寿命の活性種が脂質二重膜に及ぼす影響について調べた。GFP内包GUVにPTWを添加したところ、GUVの形状は変化せずにGFPの蛍光が失われた。GFPはpH低下によって可逆的に蛍光を失うが、PTWによる変化は不可逆的であった。PTWに含まれる活性酸素・窒素種について帰属を行った。
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