公募研究
本研究では、低温プラズマ止血を医療行為として確立することを目的として、止血に有効なプラズマ活性種の同定と中動物を用いたトランスレーショナル分子イメージング研究を行う。以前の公募研究で、現在臨床で用いられている高温熱凝固止血に比べて低温プラズマ止血では、止血後の炎症反応が早期に終了することを明らかとし、その炎症反応の差を、炎症部位に集積する放射性プローブ18F-FDGを用いたオートラジオグラフィにより定量評価することにも成功した。そこで今年度の検討では、個体を屠殺して評価するオートラジオグラフィではなく、非侵襲的に評価が可能なPETイメージングを実施した。肝臓切開・止血モデルマウスを作製し、止血15日後に尾静脈から18F-FDGを投与し、2時間後にPET撮像を行ったところ、高温熱凝固装置で止血した群に比べ、低温プラズマ照射装置で止血した群では、肝臓への放射能集積が約4割低く、炎症が収まっていることを非侵襲的に明らかとした。さらに、新学術領域内で開発されたヘリウムを作動ガスとする2種類のプラズマ照射装置を用いて、マウスの肝臓切開・止血を行ったところ、プラズマ強度の違いで止血能力に差が出ることも見出した。
2: おおむね順調に進展している
18F-FDG-PETによる止血後炎症の非侵襲的解析を達成することができ、それをミニブタで評価するための環境整備を連携研究者とともに行うことができた。また、2種類の低温プラズマ照射装置の止血能力の差も同定することができた。以上の結果から、本研究は計画通りにおおむね順調に進展していると判断した。
2種類の低温プラズマ照射装置の止血能力の差を、計画班によって行われるプラズマ中の粒子パラメータの計測結果と比較することで、迅速・低侵襲止血を達成するために必要な活性種の同定を行う。また、これまで小動物(マウス)で行ってきた止血後の炎症反応のイメージング解析を中動物(ミニブタ)に応用することで、ヒトへの橋渡し研究へと繋げる。
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Plasma Processes and Polymers
巻: 12 ページ: 1338-1342
10.1002/ppap.201500099
巻: 12 ページ: 1348-1353
10.1002/ppap.201500132