研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00896
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
神野 雅文 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30274335)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ医療 / 遺伝子導入 / マイクロキャピラリー / 遺伝子医療 / ラジカル / エンドサイトーシス |
研究実績の概要 |
計画初年度のH27年度は、大別して3項目の実験実施を計画していた。それぞれ、 (1)酸素由来・水由来のラジカルの効果の評価:雰囲気を制御できる容器を作成して、前記ラジカルの甲賀の評価を実施した。 (2)導入条件のプラスミドの分子量依存性の評価:使用しているプラスミド(pCX-EGFP: 5.5kb,360万Da)のGFP コード部を残して異なる分子量(2k~10kb 程度)のプラスミドを調整して、YOYO-1(~1.3kDa) 等も準備し、導入分子の大きさとプラズマ照射条件の関係を求めた結果、導入分子がYOYO-1等の低分子の場合とプラスミドなどの高分子に曲線が二分されることから、低分子と高分子で導入機序が異なっていることが示唆された。 (3)有効ラジカルと作用タイミングの特定(次年度前半も継続):ラジカルスカベンジャーを用いて検討した結果、高分子では、クラスリン依存エンドサイトーシスが導入事象の60%に関与している一方で、低分子ではクラスリン依存エンドサイトーシスを阻害しても導入効率は低下しないことから、低分子はエンドサイトーシスが主要な導入機序となっていない事が判明した。また、カタラーゼによりH2O2の効果を阻害することで高分子の場合、導入の60%にプラズマ由来のH2O2が寄与しているが、H2O2の摘果だけでは導入が生じないため、H2O2が有効になるには、放電由来の電気的要因とのシナジー効果が不可欠である事が判明した。 このように、プラズマ遺伝子導入法においては、電流や電界などの電気的要因とラジカルなどの化学的要因のシナジー効果が重要であり、また、プラズマの生成条件・照射条件を調整することで、電気的要因と化学的要因の重みを変化させることが出来、柔軟に多種多様な標的細胞に対応できる可能性がある事が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも示したように、3項目の実験計画に対して、酸素由来・水由来のラジカルの効果の評価については、雰囲気容器内での遺伝子導入実験はまだ十分名データが得られていないが、ラジカルスカベンジャーの利用でH2O2の重要性は確認できており、結果として、順調に進展している。プラスミドの分子量依存性については、曲線が低分子と高分子に二分され、導入機序が低分子と高分子で異なっていると示唆されるという興味深い結果が得られている。さらに、有効ラジカルと作用タイミングの特定については、クラスリン依存エンドサイトーシスとH2O2の重要性、さらには、プラズマ法の良さを示す電気的要因と化学的要因のシナジー効果が確認できるなど、概ね、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度が概ね計画通りに進展しているので、次年度は初年度の結果を踏まえ、遺伝子導入機序の解明をさらに進めること、プラズマ照射条件の最適化、実用レベルでの導入法の確立に取り組む事に加えて、まだ十分なデータが得られていない雰囲気制御の実験を継続して実施することする。
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