研究実績の概要 |
前年度に、プラズマ遺伝子導入の機序が分子量により異なることを示唆する実験結果を得たが、今年度は、実際にエンドサイトーシス阻害の有無による遺伝子導入率の変化を低分子のYO-YO1(~1.3kDa)と大分子のプラスミド(pCX-EGFP: 5,5kbp, 360万Da)で比較したところ、YOYO-1は変化がなく、プラスミドはエンドサイトーシス阻害により導入が80%低下して、通常の20%になったことから、YO-YO1などの低分子はエンドサイトーシス以外のプロセスで細胞に導入されており、プラスミドなどの大分子は主にエンドサイトーシスにより導入されていることが明確になった。 また、レーザ生成プラズマによりプラスミド溶液中に生成されるラジカルの定量をおこない、シナジー効果の検証をおこなった結果、プラズマ遺伝子導入には電気的要因と化学的要因の両方が不可欠であり、どちらか一方のみでは全く導入が生じないことが明らかになった。特に、電気的要因については電流が重要であることが示唆される結果が得られた。 これらのことから、電気的要因と化学的要因のシナジー効果によりプラズマ遺伝子導入がおこなわれていることが明確になった。この結果から、プラズマ遺伝子導入法は、細胞へのダメージを抑えて高効率で遺伝子を導入する条件を、標的細胞と導入物質に合わせてチューニングできるテイラーメイド的な汎用性を持つ手法であることが明らかになった。 標的細胞の多様化も進み、20種類以上の細胞に対してプラスミドの導入を確認している。また、国際共同研究を実施し、プラズマによるプラスミドの膜透過についてモンテカルロシミュレーションを用いた数値計算コードを開発した。
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