研究実績の概要 |
本研究の目的は、組織細胞に対する低温プラズマの影響を、皮膚の創傷治癒過程を実験モデルとして使用し、超微形態学的に明らかにすることである。低温プラズマは、止血に有効であり、皮膚の創傷治癒を促進し、上皮組織の再生を促進することが報告されている。特に炎症性皮膚疾患の治療に低温プラズマの応用が期待されている。一方、これまでのところ、ほとんどすべての研究は、光学顕微鏡レベルであったが、電子顕微鏡レベルでの体系的な研究はまだ行われていない。今回、低温プラズマによる創傷治癒過程の分子機構を解明するため、低温プラズマによる止血初期の超微細構造を電子顕微鏡により調べ、高周波電気凝固による止血初期の超微細構造と比較した。さらに、皮膚の創傷治癒に関与するガレクチン-1, -2, -3のこれらの皮膚における発現を免疫組織化学的に検討した。 高周波電気凝固による創傷皮膚では、細胞死ならびにコラーゲン線維の熱による変性が観察されたのに対し、低温プラズマ照射した創傷皮膚では細胞死ならびにコラーゲンの変性はほとんど認められなかった。さらに、低温プラズマ照射した創傷皮膚では、表層にパラフィブリルからなる薄膜が形成されることが明らかになった。 免疫組織化学的に検討すると高周波電気凝固による創傷皮膚では、ガレクチン-1, -2, -3いずれも発現が抑制されたのに対し、プラズマ照射した創傷皮膚ではガレクチン-1, -2, -3いずれもその発現の増加が認められ、プラズマ照射による創傷治癒におけるガレクチンの重要な役割が明らかになった。 創傷治癒の過程で、重要な働きをする筋線維芽細胞の細胞骨格タンパク質に注目して解析を行うため、O-GlcNAc化アクチン抗体、リン酸化アクチン抗体、非修飾アクチン抗体を作製し、予備的な実験を行った。
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