公募研究
プラズマは光・電子・イオン・ラジカルの集団で、生体分子や組織と相互作用することが知られ、近年、癌治療や止血等に応用されようとしている。しかしながら、中枢神経組織へのプラズマの作用については報告が少なく、その応用の可能性は未知数である。われわれは、成熟したラットを対象に、麻酔下に頭頂部頭蓋骨の一部をくも膜を残して除去し、大脳新皮質へ大気圧プラズマ(ヘリウムガス使用)を直接照射して、その後の時間経過に伴う組織構造や出現細胞の変化を追跡した。その結果、プラズマ照射後に大脳皮質内で、前駆細胞マーカー(NG2)陽性のグリア細胞・ミクログリア(Iba-1陽性)・アストロサイト(GFAP陽性)で構築される特徴的な多層構造が形成されることを見出した。また、Ki-67の発現を指標に細胞の増殖活性を観察したところ、プラズマ照射領域において多数の増殖細胞が出現することもわかった。こうした増殖細胞の多くは前駆細胞マーカーであるNG2を発現していたが、グリア前駆細胞のような突起は乏しかった。そこで、こうした多層構造の形成と増殖細胞の出現を基準に、プラズマの照射条件の最適化をおこない、増殖活性の高い細胞を多量に取得する条件を確立した。現在、こうした増殖細胞の由来や性質を調べるとともに、今後、プラズマの再生医療へ向けた実用化を睨みながら、プラズマ照射によって誘導・出現した様々な細胞の分化誘導実験等を実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定に沿って研究を進められており、プラズマの照射条件の最適化も実施した。研究に必要な機材も既に調っており、照射条件の最適化によって再現性のよい実験系も確立でき、研究は順調に進んでいる。
今後、大気圧プラズマの中枢神経組織の再生医療への実用化を目指すため、プラズマ照射によって誘導される様々な細胞の詳細なキャラクターを解明し、さらに分化誘導実験等を実施する。また、病態モデルにおけるプラズマ照射の効果を確認する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件、 招待講演 8件)
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