歯科・外科用インプラントの表面にある種のリン酸カルシウムを成膜すると、骨伝導性を付与することができる。研究代表者らはこれまで、過飽和溶液を反応場とする液相成膜技術とレーザープラズマによる表面加工技術を組み合わせ、インプラント用の材料基材に対するリン酸カルシウム成膜技術を開発してきた。本研究では、レーザープラズマ加工による基材の表面構造変化・液相成膜反応を基礎的に追求するとともに、骨伝導性インプラントの開発に向けて、リン酸カルシウムを成膜したジルコニア基材に対し、動物実験による機能実証を行った。 平成28年度は、前期公募研究を含めたこれまでの基礎検討の結果を総合し、種々の基材にリン酸カルシウムを成膜するためのレーザープラズマ条件について比較検討を行い、和文・英文総説としてまとめた。 ジルコニア基材に対する応用研究においては、平成27年度の予備検討の結果をもとに、ウサギの匹数を増やして動物実験を実施した。ジルコニア基材としては、インプラント材料として有用なイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y-TZP)を用いた。フェムト秒レーザープラズマ加工後にリン酸カルシウムを成膜したY-TZP基材(A群)が、未加工基材(C群)およびリン酸カルシウム成膜のみを施した基材(B群)に比して、より強固に骨と固着することを実証した。非脱灰標本を作製して骨と基材との界面を観察した結果、B群およびC群に比べ、A群では骨組織がY-TZP基材と直接接触している領域が多く観察され、骨接触率の有意な向上が認められた。A群では、骨組織が基材との隙間を埋めるように再生したことで、骨固着力を向上させたと考えられた。一方、A群およびB群において、表面に成膜したCaPの残存を明確には確認することができなかった。A群で表面に形成させた凹凸構造が骨固着力の向上に重要な役割を持つことが示唆された。
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