(1)光化学的手法によるゲルマノンの新規発生法の開発:環状ゲルマノキサンの光脱離およびジゲルマノキサンの2段階励起などの光化学的手法を用いて,ゲルマノンの新規発生法の開発に挑戦した。フェニル基を有するジゲルマノキサンでは,1段目の励起(266 nm)で生成するゲルモキシラジカルは短寿命であるが,370 nmに非常に強い過渡吸収を与えた。そこで,平成28年度に購入したps-LDパルスレーザーを用いて,選択的に2段目の励起を行ったところ,新しい過渡種の発生が確認された。現在,この過渡種の帰属を行っている。 (2)磁場効果を用いた三重項ビラジカルの発生と反応性の解明:オクタイソプロピルシクロテトラゲルマンの光反応は,従来,ゲルミレンの発生が主反応であると信じられてきた。研究代表者の若狭は詳細な捕捉実験や物理化学的手法を用いて本反応を再検討し,Ge-Ge結合の結合解裂によるビラジカルの発生が主反応であることを明らかにした。生成する一重項ビラジカルは,ラジカル間距離が短いので交換相互作用が大きく,ゼロ磁場ではスピン変換できず50 ns程度で再結合する。しかし,磁場を印加すると,Zeeman分裂したビラジカルの三重項状態と一重項状態が適当な磁場で交差するので,一重項から三重項へスピン変換する(レベル交差機構による磁場効果)。よって,これまで全く報告例がない三重項ビラジカルを作ることができる。そこで,環状オリゴゲルマンから三重項ビラジカルを発生を0-10 Tの強磁場下で調べた。
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