研究実績の概要 |
本研究では、複数の典型元素の性質を活用した新規な結合様式を有する化合物の合成と、その構造および性質の解明を目的とする。本年度は5配位リン-3配位ホウ素結合化合物の合成と、5配位ケイ素-4配位ホウ素化合物の合成について検討した。5配位リン-3配位ホウ素化合物の合成に向けてホウ素上に脱離基を有する化合物を合成し、ホウ素から置換基を引き抜くことで目的化合物の合成を試みた。脱離基としてエトキシ基を用いた場合には、強いルイス酸を作用させてもホウ素のルイス酸性が勝ってしまい、脱離反応が進行しなかった。脱離基としてヒドリドを用いてトリチルカチオンを作用させたところ、ヒドリド引き抜き反応が進行した。期待される5配位リン-3配位ホウ素結合化合物の発生は、ピリジンによる捕捉反応によって確認できた。また、11B, 31P NMRで溶液中での生成を示唆する結果を得た。次に、5配位ケイ素-4配位ホウ素化合物の合成のために、前駆体となる4配位ケイ素ジアニオン種の発生を試みた。4配位ケイ素化合物に対して、低温条件でリチウムナフタレニドを作用させることで、還元反応が進行してジアニオニオンを発生させた。その生成はプロトンでクエンチすることによるヒドロシリカートの生成により確認できた。生成したジアニオン種は温度の上昇に伴って徐々に分解し、熱的に不安定であることがわかった。今後、このジアニオン種と各種ホウ素試剤との反応を行うことで、5配位ケイ素-4配位ホウ素化合物の生成が期待される。
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