研究実績の概要 |
本研究の目的は、電荷輸送・発光機能を有する電場感応性π共役液晶材料を創製することである。
ピレンの1,3,6,8位に長鎖アルコキシフェニルビチオフェンを導入したX字型π共役分子を設計合成した。室温を含む幅広い温度範囲でディスコチックカラムナー液晶相を発現した。Time-of-Flight法により電荷移動度の測定を行った結果、ヘキサゴナルカラムナー相において約10-4 cm2 V-1 s-1のホール移動度を示すことが分かった。さらに、室温でカラムナー液晶試料に機械的なせん断応力を加えたところ、発光色が変化するメカノクロミック発光機能を示すことが分かった。示差走査熱量測定、X線回折測定、紫外可視吸収スペクトル測定、蛍光測定の結果、分子間のらせん状集積構造が機械的刺激によって変化することが明らかとなり、これにより発光色および発光強度の変化が生じることが分かった。また、電荷移動度の向上を目指して、分子間水素結合により自己組織化ファイバーを形成することが知られているビス(ラウリロイル)ヒドラジドとπ共役液晶分子との複合化を行った。その結果、ファイバーとの複合体においてホール移動度が2倍向上することが分かった。
電場配向性カラムナー液晶の創製を目指して、トリス(トリアルコキシフェニルエチニル)ホスフィンオキシドを設計合成した。室温を含む幅広い温度範囲でヘキサゴナルカラムナー液晶相を発現することが分かった。さらに、液晶をITO電極基板間に封入し、直流電場を印加するとカラムの軸が垂直配向することが明らかとなった。ホスフィンオキシドの双極子モーメントが電場応答したためと考えられる。
|