研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
15H00927
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川口 博之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20262850)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ヒドリド錯体 / 対カチオン効果 / 接触型イオン対 |
研究実績の概要 |
高酸化状態の金属、フェノキシド配位子、ヒドリド配位子の組み合わせからなる電子欠損型ヒドリド錯体は、その金属中心の高いルイス酸性と大きく分極した金属–ヒドリド結合のため、特異な反応性を示すことが知られている。我々は、フェノキシド基を配位子骨格に組み込んだ多座配位子を利用した電子欠損型ヒドリド錯体につて研究を進めている。これらのヒドリド錯体の特徴の一つは、アニオン性ヒドリド錯体であり、対カチオンとしてアルカリ金属を分子内に取り込み、接触型イオン対を形成することである。本研究の目的は、対カチオンの選択、溶媒和によりヒドリド錯体の反応性を制御することである。今回、タンタルのヒドリド錯体と一酸化炭素の反応における対カチオン効果について検討した。 対カチオンとしてカリウムをもつタンタルのヒドリド錯体(1-K)に一酸化炭素を反応させると、還元的カップリング反応が進行し、COの六量体が生成することを以前に報告している。この反応における対カチオン効果を検討するために、対カチオンにナトリウム(1-Na)とリチウム(1-Li)をもつヒドリド錯体をそれぞれ合成した。錯体1-Naとの反応では錯体1-Kと同様に反応が進行し、COの六量体が得られた。一方、錯体1-Liとの反応ではCOの三量体が生成した。この三量体の対カチオンをリチウムからナトリウムに交換すると、COの三量体の二量化が進行し、六量体が生成するのが観測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アニオン性ヒドリド錯体の反応性が対カチオンの種類により大きく異なることを見出した。この結果は今後の研究を進める上で重要な指針を与えるものであり、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)これまでの研究で得られたアニオン性ヒドリド錯体の反応について対カチオン効果を検討するために、対カチオン交換などにより、対カチオンの異なるアニオン性ヒドリド錯体を系統的に合成する。 (2)上記の(1)で得られたヒドリド錯体の反応性を比較検討する。 (3)アルカリ金属を効果的に取り込める部位(クラウンエーテルなど)を組み込んだ配位子を設計し、アニオン性ヒドリド錯体の合成に適用する。
|