研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
15H00928
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
桑田 繁樹 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10292781)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感応性化学種 / 遷移金属錯体 / 小分子変換 / 均一系触媒 |
研究実績の概要 |
酸化還元活性を示す後周期遷移金属や、柔軟な配位数をとり得る高周期典型元素は、いずれも外部刺激に応答する感応性化学種を形成する。性質が異なるこれらの感応性化学種を、互いに結合して失活させることのないよう工夫しつつ同一分子内の近接した位置に組み込むことができれば、両者が外部基質に対して相乗的に作用するような、より高機能な新しい感応性化学種を与えるものと期待される。本研究では、ルイス酸性を示す後周期遷移金属と、求核性をもつ典型元素ヒドリド種から構成されるFrustrated Lewis pair型の感応性化学種の合成と、新しい反応様式での小分子の化学変換や触媒反応への応用を目指している。 研究初年度である本年度は、所望の要件を満たすようなリンカー部位としてアザキサンテニル基(ax基)を新規に設計した。まず、ニコチン酸誘導体に対するブロモフェノールの求核置換反応と、引き続く分子内Friedel-Crafts反応、ジメチル化反応によって、ブロモアザキサンテン(axBr)を3段階収率38%で得た。axBrをリチオ化したのちに0.5当量のジクロロシランを加えたところ、二つのリンカー部位と典型元素ヒドリド部位からなるビス(アザキサンテニル)シラン(axSi)が得られた。これらの化合物は、1H NMRスペクトルなどの分光分析法によって同定した。とくに単結晶X線構造解析の結果、遷移金属を固定するピリジン部位と求核性ヒドリド部位であるヒドロシランが約5 Åの距離で固定された構造をもつことを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画当初の分子設計指針にもとづいて、構造規定された遷移金属-典型元素ハイブリッド型感応性化学種を構築するためのリンカー部位(ax基)の設計、合成をおこなうとともに、そこにまず典型元素ヒドリド種を導入することに成功しており、研究初年度の目標を概ね達成している。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる本年度は、前年度の研究成果に立脚し、以下の項目を重点課題として研究に取り組む。 (1) axSi錯体の合成と反応性解明 axSiの錯形成反応によって、ケイ素を含むハイブリッド型感応性化学種の合成をおこなう。二酸化炭素、窒素などの小分子に対するそれらの反応性を調査するとともに、サイクリックボルタンメトリーによる酸化還元電位の測定など、基礎的な物性の収集をおこなう。 (2) ax基をもつホウ素化合物の配位挙動の解明 axSiと類似の構造をもつaxBの合成と、これを配位子とする金属錯体の合成に取り組む。
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