研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
15H00932
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井上 将彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60211752)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロタキサン / ピレン / 蛍光 / 円偏光発光 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、[4]ロタキサンの左右両円偏光発光(円偏光発光:CPL)の実現と広範な波長領域への対応を通して、本法の CPL 材料創出法への一般性を検証するため、以下の項目を実施する。
(1) γ-シクロデキストリン(γ-CD)の鏡像異性体を用いずに [4]ロタキサンから左右両円偏光発光を実現する手法の確立:これまでの研究で得られた知見より [4]ロタキサンの円偏光の回転方向は、γ-CD に内包された 2 分子のアルキニルピレンが形成するスタック構造の絶対配置関係により決定されることが判明している。この絶対配置関係が反転する条件を計算化学的手法から探索して、γ-CD の鏡像異性体を用いずに円偏光特性が反転した [4]ロタキサン(反転 [4]ロタキサン)を設計した。
(2)アルキニルピレン以外の発光分子として、アルキニルペリレンを新たに設計・合成した。またこのアルキニルペリレンが γ-CD に 2:2 のモル比で包接されることを確認した。そしてこの包接錯体が、強い CPL を示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)計算化学的手法を用いて、γ-CD の鏡像異性体を用いずに円偏光特性が反転した [4]ロタキサン(反転 [4]ロタキサン)の探索に成功した。
(2)新たな発光分子であるアルキニルペリレンの合成に成功し、このアルキニルペリレンが γ-CD と 2:2 のモル比で包接錯体を形成し、さらにこの錯体が強い CPL を示すことを確認することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)反転[4]ロタキサンの分子設計の妥当性を検証するため、昨年度に設計した修飾アルキニルピレンと修飾 γ-CD を合成し、分子間会合での擬 [4]ロタキサンの円二色性および CPL スペクトルを測 定する。擬 [4]ロタキサンのキロプティカル特性評価の結果、円偏光の反転が確認されない場合は、計算化学に立ち戻り、より高精度な量子化学計算法の使用も視野に入れる。また、擬 [4]ロタキサン の物性を各種分光測定より評価して、得られた情報(会合定数など)を次のロタキサンの合成条件の最適化に利用する。その後、修飾アルキニルピレンと修飾 γ-CD、ストッパー分子を用いて、 反転 [4]ロタキサンを合成する。反転 [4]ロタキサンの光学特性およびキロプティカル特性を、各種 分光測定より評価する。
(2)これまでの研究で得られた知見を活かして、広範な波長に対応 できる [4]ロタキサン群を合成する。発光部位には、同種もしくは異種のアルキニル発光分子(ナフタレン、アントラセン、ピレンなど)を組み合わせたエキシマー発光体、およびヘテロエキシマー発光体を使用する。発光部位を包摂するキラルホスト分子には各種 CD だけでなく、 CD では包摂できないサイズの発光部位の使用を考慮して、空孔サイズのバリエーションが豊富なキラル包摂化合物(ククルビットウリル、キラルなピラーアレーン)なども選択肢に入れる。分子モデリングソフトから各パーツの最適な組み合わせを決定し、それらを用いて [4]ロタキサンを 合成する。合成した [4]ロタキサンは、(1) の手法から反転 [4]ロタキサンへと誘導する。
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