本研究では、反応経路自動探索(GRRM)法を基軸に、本研究領域の実験グループの提案を踏まえ遷移金属錯体触媒の反応機構の理論的解析、分子設計法の提案をしている。 1:パラジウムNHC触媒によるエナンチオ選択的鈴木宮浦カップリング パラジウムNHC触媒によるアジリジンのカップリング反応について検討している。トランスメタル化ステップが律速段階となっていることが明らかになった。また、二価パラジウムが0価に還元されるステップでは内圏型反応が支配的であるとわかった。添加される炭酸塩との反応について検討を行なっている。 2:鉄ビスフォスフィン錯体によるエナンチオ選択的クロスカップリング 中村らによって提案されたキラルフォスフィン鉄触媒によるカップリング反応ではオレフィンと芳香族亜鉛化合物を高い立体選択性で高収率で反応させることができる。これまでに提案されている反応機構では芳香族亜鉛化合物と鉄、キラルフォスフィンが錯形成したのち、オレフィン挿入過程を経て、芳香族亜鉛化合物とのトランスメタル化を通して生成物に至ると考えられている。2016年度の研究で、実験時に2割程度溶媒に添加されるTHFが触媒に配位している可能性が示唆された。特に5重項状態が安定化されると考えられる。密度汎関数法による計算で外圏型反応と内圏型反応の存在が示唆されている。これまでの計算で、鉄上に配位したArylに、オレフィンが外から近く外圏型反応がもっともらしいとわかった。
|