研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
15H00939
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アザフラーレン / 内包フラーレン / 水分子 / NMR緩和時間 / 動的挙動 / 静電ポテンシャル |
研究実績の概要 |
アザフラーレンC59Nは,フラーレンC60の炭素原子の1つを窒素原子に置き換えた構造をもち,C60と同等の内部空間をもつことから内部への小分子の導入が可能であると期待される.我々は,その内部空間に小分子を導入する手法を確立し,内包小分子の動的挙動を調べるために各種NMR測定および理論計算をおこなった.まず,スピン格子緩和時間T1を測定した結果,H2@C59NのT1はH2@C60とほぼ同程度であったにも関わらず,H2O@C59NはH2O@C60の約3倍のT1をもつことがわかった.これは,内包された水分子とC59N骨格上の窒素原子との相互作用によるものと考えられる.しかし,温度可変NMR測定からは,想定される水素結合的な相互作用を否定する結果が得られた.そこで,モデル化合物HC59Nの静電ポテンシャルを理論計算を用いて評価した結果,予想に反し,窒素原子上の静電ポテンシャルは,骨格外部では負に,骨格内部では正に帯電していると示唆された.これらのことから,C59Nに内包された水分子は,骨格上の窒素原子との間の静電的な相互作用により回転運動が抑制され,核磁気緩和が遅延していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通り、アザフラーレン内部に小分子を導入する手法を開発することができた。さらに、内包された水分子の動的挙動を検討することにより、窒素原子と酸素原子が引きつけ合うという予想外の結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
開口フラーレンは、フラーレン上でのπ共役系の切断モチーフに関してキラルである。そこで、ラセミ体混合物を光学分割し、純粋なエナンチオマーを単離する。得られた各エナンチオマーの絶対構造を決定し、CO2 内包体の紫外可視領域、あるいは赤外領域の円二色性スペクトルを測定することにより、キラル環境下にある特徴的な性質を見出す。さらに、CH3OH がメチル基を下側に向けて選択的に内包されるという予備的な知見を発展させ、キラルなメチルエーテルのエナンチオ選択的な挿入反応について検討する。キラル化合物における光学物性探索は、領域内の池田浩 教授 (大阪府立大学) に助言を頂きながら進める。既に効率良く光学分割できるキラルカラムの選定は完了している。さらに、開口部をパイ共役系で拡張した誘導体を合成する。これにおいては、2つの平面π共役系が三次元的に拡張され、かつ、お互いが強固に固定されたユニークな構造をもつ。そこで、ゲスト分子の内部への取り込み挙動、内包分子の回転挙動、ならびにその際の発光挙動の変化を明らかにする。領域内の吉澤一成 教授 (九州大学) との共同研究により、分散力を考慮した理論計算、ならびに光励起状態の理論計算を行い、光学特性と分子設計に理論的な解釈を加える。さらに、領域内の山口茂弘 教授 (名古屋大学) に助言を頂きながら、内包化学種の動的挙動による発光のON-OFF制御を達成する。
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