公募研究
標準型[NiFe]ヒドロゲナーゼは酸化型で安定であり、酸塩基平衡により活性準備状態Ni-SIrが触媒サイクルの1つの状態であるNi-SIaに変換され、触媒反応(H2の分解/合成)が可能となる。したがって、本酵素の触媒反応機構の理解には、Ni-SIrからNi-SIaへの変換機構の理解が不可欠であるが、その変換機構の詳細は不明であった。本年度は、103-238 Kでレーザー光(514.5 nm)照射下のFT-IRスペクトルを測定することで、Ni-SIrとNi-SIa間の酸塩基平衡の反応機構を明らかにした。まず、好気的に精製した酵素を37℃でH2と5.5時間反応させることでH2還元型酵素を調製した。次に、H2還元型酵素を5当量のフェノサフラニン(Em = -252 mV)を用いて部分的に酸化させ、主にNi-SIrとNi-SIaを含むフェノサフラニン酸化型酵素を調製した。フェノサフラニン酸化型酵素の(光照射時)-(光照射前)のFT-IR差スペクトルには、Ni-SIaのCO伸縮振動(νCO:1943 cm-1)とCN-伸縮振動(νCN:2077と2089 cm-1)に由来する正のピークおよびNi-SIrのνCO(1924 cm-1)とνCN(2056と2071 cm-1)に由来する負のピークが観測された。差スペクトルにおける正のピークは生成物、負のピークは反応物に由来し、Ni-SIrがNi-SIaに光活性化されることが明らかとなった。さらに、溶液のpHを8.0から9.6に上げるとNi-SIrの光活性化が著しく抑制されたことから、この光活性化反応ではNiとFe間の架橋配位子OH-がプロトン化され、H2O分子として解離すると解釈した。また、酵素反応を追跡するためのストップトフロー共鳴ラマン装置を開発した。これらの研究成果は[NiFe]ヒドロゲナーゼの反応機構の理解に役立つものである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Raman Spectroscopy
巻: 48 ページ: 680-685
10.1002/jrs.5100
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: 18 ページ: 22025-22030
10.1039/c6cp04628b