研究領域 | 感応性化学種が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
15H00947
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
的場 康幸 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (90363051)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | チロシナーゼ / 銅 / ラマンスペクトル / X線結晶構造解析 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
チロシナーゼは、活性中心に二核銅を有する酸化酵素であり、チロシンをドーパキノンへと変換する反応を触媒する。申請者は、チロシナーゼに特異的な銅輸送タンパク質(キャディー)との複合体として、チロシナーゼの三次元構造を決定した。さらに、活性中心にあるキャディーのTyr98残基が、チロシナーゼの触媒作用によりドーパキノンへと変換されうることを発見した。共鳴ラマンスペクトルを測定した結果、チロシナーゼをオキシ型に変換すると、初期段階でμ-η2:η2-ペルオキソ二核銅(II)が形成し、最終的にドーパセミキノン・Cu(II)複合体が生じることが明らかになった。さらに、X線結晶構造解析を用いた検討からは、チロシナーゼ・キャディー複合体の結晶中でオキシ型チロシナーゼを形成させると、Tyr98残基のオルト位に濃い電子密度が観測され、結晶中でもチロシナーゼ反応が進行していることが強く示唆された。 これまでの検討から、キャディーのTyr98残基に対するチロシナーゼの大まかな反応機構を提唱することができた。次の課題として、Tyr98残基に対するチロシナーゼの反応性を弱めることで、短寿命の反応中間体を捉えることを試みた。具体的には、キャディーのTyr98残基をフッ化チロシンに置換することに取り組んだ。無細胞タンパク質合成システムを用いて、フッ化チロシンを導入したチロシナーゼ・キャディー複合体を取得することを試みたが、得られた複合体の溶解度が低いことが判明した。そこで、フッ化チロシンを導入したキャディーのみを無細胞タンパク質合成システムで合成し、チロシナーゼ単体は野生型複合体から調製し、その後両者を混合することで、目的とする複合体を得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フッ化チロシンの導入によりチロシナーゼ・キャディー複合体の溶解度が低下したため、別の調製方法を検討しなければいけなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに開発した方法で目的タンパク質を調製し、共鳴ラマンスペクトル測定とX線結晶構造解析を実施する。また、チロシナーゼと相同性を持つものの、チロシン酸化活性が低い酵素についても、キャディーと複合体を形成させることを試みる。
|