研究実績の概要 |
有機二次電池の容量とサイクル寿命,両方の向上を目指した分子系として,シクロヘキセン環が挿入した融合型TTF四量体の合成を行った。テトラキス[2-(エチル)ヘキシルチオ]誘導体のPhCN-CS2(1:2, v/v, 支持電解質0.1M Bu4NPF6)中における酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリー法により検討したところ,+0.04(2e-), +0.17(1e-), +0.38(2e-), +0.57(1e-), +0.83(2e-)(V vs. Fc/Fc+)に5対の酸化還元波が観測された。それぞれの酸化還元電位と移動電子数から酸化還元挙動を考察すると,最初の酸化で生じた正電荷はシクロへキセン環で拡張されたTTF部位に分布し,以降の酸化は残りのTTF部位が寄与するが,その際に生成する正電荷は,分子内クーロン反発を軽減するように分布することが示唆された。テトラメチル誘導体を正極活物質として用いたコイン型電池の充放電特性において,2.5-4.5 V(V vs. Li/Li+)での1回目の放電容量は183 mAh/gであり8電子関与での理論容量の74%であった。この電池は20回の充放電後において,113 mAh/gの放電容量を示し,初回放電容量の62%の容量を保持していた。
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