公募研究
本研究では新規な感応性化学種について、その分子構造と二光子吸収特性の関係を明らかにし、応用を探索すると共に、二光子吸収を用いた化合物の応用研究の加速に資するため分光学の非専門家でも二光子吸収の評価が容易となる様に比較対象物質(標準物質)を整備することを目的とし、そのための学術的な基礎を確立する。このため本年度は高周期典型元素を含むアザポルフィリン誘導体のより広範囲な波長域での二光子吸収スペクトルの測定を行うとともに、連携研究者の協力の下のモデル分子について量子化学計算も行った。中心金属にリン誘導体を持つアザポルフィリンは1200 nmの近赤外域まで電荷移動性と考えられる幅広い一光子吸収のピークを示すが、同じ遷移エネルギーに相当する波長での二光子吸収断面積は1500 GMと大きな値に達することが見いだされた。これに対し、中心金属がMgの場合やフリーベース体では従来のアザポルフィリン誘導体と同様強い二光子吸収は見られず、高周期典型元素であるリンを含む場合で特徴的な特性であることを明らかにした。加えて、Chichibabin型と呼ばれる分子骨格を持つ一重項中間ジラジカル性化合物について、主要骨格に関係しないと考えられる置換基を無くした新規化合物についてその二光子吸収特性を測定し、主要骨格が二光子吸収特性に支配的な寄与をもたらしているという予測を裏付ける結果を得た。また、二光子吸収スペクトル測定に用いた波長可変レーザー光源を更新したため、その波長特性や時間特性などが測定結果に及ぼす影響について繰り返し評価し、標準物質群の整備に関連する蛍光法による評価についての準備も進めた。
2: おおむね順調に進展している
標準物質群の整備については予定よりも遅れている一方、計画していたアザポルフィリン誘導体に加え、新規一重項中間ジラジカル性化合物の二光子吸収特性の解明が進んでいるとともに、より効率的な測定手法の確立も進んでおり、概ね順調と言える。
平成28年度においては、標準物質の整備に向けた評価を重点的に行っていくことに加え、昨年度に引き続き班内・班間との共同研究を進めていく。領域外との共同研究についても積極的に行い、多様な新奇感応性化学種の二光子吸収特性の解明をフェムト秒Z-scan法による実測と、可能なものについては一部理論化学的手法も援用して行うことで進める。これらの研究で得られた成果を取りまとめ、学会発表や論文化による情報発信を積極的に行っていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件)
ChemPhysChem
巻: - ページ: -
10.1002/cphc.201600178
Chemistry A European Journal
巻: 22 ページ: 5219-5232
10.1002/chem.201504903
Chemical Communications
巻: 52 ページ: 331-334
10.1039/C5CC07664A
Nonlinear Optics, Quantum Optics
巻: 46 ページ: 323-330