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2015 年度 実績報告書

ニッケル-炭素結合を鍵とするニッケル錯体の新規触媒機能探索

公募研究

研究領域感応性化学種が拓く新物質科学
研究課題/領域番号 15H00967
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

中島 裕美子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 触媒化学融合研究センター, 主任研究員 (80462711)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードニッケル / 3d金属 / 触媒反応
研究実績の概要

本研究は、ニッケル-炭素結合機能の詳細解明と、高効率なニッケル錯体触媒の開発を目指す。これまでの検討により、カチオン性ニッケルアリル錯体が、ニッケル-炭素結合を活性点として、オレフィンのヒドロシリル化反応を効率よく触媒することを見出している。本年度は、DFT法(M06)により、モデル反応としてEt2SiH2による1-ブテンのヒドロシリル化反応の機構解析を行った。本反応は、錯体反応場における段階的なSi-H結合切断、Si-C結合形成を経て進行する。また、Si-H結合切断、Si-C結合形成、いずれの段階においてもケイ素原子とニッケルが2.4-2.8オングストロームと一定の距離を保ちながら進行する。また、隣接するアリル基がケイ素と相互作用することで、高配位ケイ素を経由して反応が進行することを明らかにした。したがって、本反応過程は、一般的な酸化的付加・還元的脱離を経由しないことが示された。このような特異な反応機構は、カチオン性のニッケル中心と電子陽性なケイ素の電子反発を避けた結果によるものと、現段階では考えている。
本年度は、ニッケル錯体のさらなる機能開拓に取り組んだ。その結果、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)が、ニトリル化合物のヒドロホウ素化に触媒活性を示すことを見出した。本反応は、既にモリブデン触媒(Nikonov et al, Chem. Commun 2012, 48, 455)、マグネシウム触媒(Hill etal. Chem. Sci. 2016, 7, 628.)、ルテニウム触媒(Szymczak et al, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 12808.)を用いても進行することが既に報告されているものの、本反応は安価なニッケル塩を用いることが可能となる点で極めて興味深い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、カチオン性ニッケルアリル錯体が、ヒドロシリル化反応において、ニッケル-炭素結合の働きにより、効率よくSi-H結合切断およびSi-C結合形成を促進することを見出した。したがって、予定通り、ニッケル-炭素結合の特異な機能を解明することが出来た。また、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)が、ニトリル類のヒドロシリル化を触媒することも明らかにした。以上の点において、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

先にも述べたとおり、本年度の取り組みから、ニッケル-炭素結合が、ケイ素-水素結合切断、ケイ素-炭素結合形成反応を促進することを見出した。本反応では、ケイ素が高配位状態を取ることが、反応進行の鍵となる。そこで、同様に高配位状態を取ることが可能なリン化合物を用いて、同じくオレフィン類への付加反応を達成できるか検討する予定である(オレフィン類のヒドロホスホリル化反応)。
以上の取り組みと並行して、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)を用いたニトリル類のヒドロホウ素化反応の機構解析を行う。

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公開日: 2017-01-06  

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