放射性核種、特に多量に放出され、半減期の長いセシウムは東日本全域に広く影響を与え続けることが予想される。放出後の循環過程に対する知見が不足しているため、生態系においてどのような経路をたどるのか予測することは難しく、その動態解析と対策立案は喫緊の課題である。本研究では、樹木に対するセシウムの蓄積と移動、ならびに既にセシウムを取り込んだ樹木の利用について、それぞれ研究を行う。セシウムの挙動とその性質とを明らかにした上で、効率的な除去方法について考案・実証し、セシウム含有木材の効率的利用へと繋げる。 第二年度では以下の項目について重点的に研究を推進した。 1)セシウムの植物中成分に対する吸脱着挙動 東北の山林地方で主要樹種であるスギ、コナラ、アカマツを対象として、樹皮へのCsCl水溶液塗布を行い、樹木中への浸透係数を評価した。また特に降下したCs粒子の残存が予測されている枝葉についても詳細なCsの輸送挙動を評価した。得られた結果より、樹皮表面への沈着あるいは経根吸収によるCsの取り込み挙動が樹種によって大きく異なることがわかった。特に植物内の転用についてCsとKの挙動が異なることがわかった。 2)パルプ工程におけるセシウムの挙動解析 初年度までに、パルプ化処理によってCsが木材から高効率で除去できる可能性が示唆されていた。第二年度ではさらに実験を進め、樹皮、辺材、心材での違いを評価した。さらに137Csの沈着した木材と133CsCl水溶液を樹皮に塗布した木材とを比較した。結果より、137Cs・133Cs共に辺材・心材からは高効率でCsを除去可能であり、パルプ原料として利用できることがわかった。樹皮に沈着した137Cs・133Csはどちらも不溶性残渣として残留する比率が高かった。このことから、樹皮内においてCsを不溶化する何らかの生体的機構の存在が示唆された。
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