研究領域 | 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究 |
研究課題/領域番号 |
15H00977
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
内山 雄介 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80344315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 環境動態 / 放射性核種 / 海洋流動・分散モデリング |
研究実績の概要 |
H27年度は,137-Cs(セシウム137)の懸濁物への静的吸脱着モデル(Misumi ら,2014)をベースに,懸濁態に吸着した137-Csの輸送と環境中(海水中および堆積物中)での溶存態・懸濁態間の移行過程を同時に解析し得る新しいダイナミック吸脱着(DAD:Dynamic Absorption and Desorption)モデルの開発に取り込んだ.さらに,H25-26公募研究において開発済みの溶存態137-Cs分散・土砂輸送広域分散モデルROMS-WCSにDADモデルを統合し,超高解像度河口・浅海域用統合型3次元懸濁態・溶存態137-Cs動態解析システム(ROMS-WCS-DAD)を構築した.このシステムを用いて,JCOPE2再解析データ(Miyazawaら,2008)からの4段ネスティングによるdownscaleを行い,水平空間解像度をJCOPE2の10kmから,3km,1km,250m,50mへと順次細密化させ,福島県新田川・富岡川河口を含む福島第一(1F)~福島第二原発(2F)間の浅海域を対象とした,溶存態・懸濁態を含む全137-Cs動態海洋再解析を実施した.モデル領域は新田川河口を中心とした約20 km四方の領域であり,これを水平解像度約50m,鉛直32層で表現し,再懸濁評価に必要な波浪推算モデル(GPV-CWMとSWANのカップリングシステム)により表現することにより,A02海洋・海洋生物班,A03河川班によって実施されたH24-26年度現地観測の再解析に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイナミック吸脱着(DAD:Dynamic Absorption and Desorption)モデルの開発は,①基礎方程式の導出,②モデルへの組み込み,③テスト計算,④本計算から構成される.基盤となるROMS-WCSに対してDADモデルは,(懸濁粒子クラスを3つとした場合)基礎方程式が3つ増加し,さらに海底地盤モデルが必要となるため,非常に大規模な改造を必要とする.その過程で,収束性が向上しない問題や,各要素間の収支構造が精緻に計算できないなど様々な問題が発生したので,①から③までのルーチンを綿密に繰り返した.そのため,DADモデルを組み込んだ④の実施が予定よりも若干遅れた.モデル開発上の主要な問題は概ね解決したので,H28年度は④の実施と解析を鋭意進めていく予定である.なお,H27年度は並行してDADモデルを組み込まない④の解析を重点的に進めており,その結果を取りまとめて学術論文として投稿しているところである.
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今後の研究の推進方策 |
実施状況に記載したように,H27年度はDADモデルの開発に若干手間取ったため,本計算の実施と解析を十分に行うことができなかった.H28年度はこれらについて早急に取り組むとともに,当初計画で予定していた海浜流,掃流土砂輸送の効果を組み込み(これらのプロトタイプは開発済み),長期再解析を実施する.
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