研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00998
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久木 一朗 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90419466)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | π造形科学 / 超分子化学 / 結晶工学 / 水素結合 / ヘキサゴナルネットワーク / パイ共役 / 多孔質材料 / 層構造 |
研究実績の概要 |
C3対称分子を用いた二次元ヘキサゴナルネットワーク(2D-HexNet)は、その高い対称性が示す構造美のため科学において最も普遍的で魅力的な単位構造である。トポロジーに起因した興味深い物理物性の発現が期待でき、また適当なC3対称分子を用いればヘキサゴナル空間をもつ多孔質構造が構築できる。本研究の目的は、C3対称性のπ共役系分子 (C3-PI)で構成される多孔性2D-HexNetを相互貫入なく積層させたπ電子系3次元多孔質構造を造形することによって、物理的・電気的刺激のみならず空孔への分子浸透による化学刺激を引き金として、C3-PI集積体のintrinsic物性を協奏的かつ可逆的に変調する新たな機能材料の創成である。具体的には、C3-PI分子を水素結合性TPhモチーフでネットワーク化させる申請者独自の手法によって、従来系では未達成の、形・大きさ・multiplicityを制御した巨大空孔を有するπ電子系2D-HexNet積層体を構築し、その層構造の動的変化から電子的ダイナミクスを引き出す。本年度は、分子の大きさが異なる4種類のC3-PIの合成を行い、これらを用いて、複数の空孔を有する一連の水素結合性HexNetの構築に成功した。HexNetは、相互貫入せずに積層し、非常に低密度の層状フレームワークを形成することが明らかとなった。カルボン酸を用いた水素結合によって構築したこのような一連のHexNet層状構造体は初めての例である。さらに、HexNet積層体の脱溶媒による層ずれ構造を同定し、脱溶媒後も、空孔とHexNet構造を保ったままであることが分かった。さらにこの構造体を用いて、炭化水素吸着の選択性を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りC3PI分子の設計・合成を行い、またそれらを用いたHexNetの構築と同定も予定通り遂行した。またHexNet積層体のIntrinsic機能の評価についても、多くの共同研究を通して着実に遂行している。 以上より、本研究課題は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、引き続きC3PI分子(特に非平面型のC3PIおよびヘテロ原子を導入したC3PI)の合成を行い、それを用いてHexNet構造の構築およびその非相互貫入的な積層によるHexNet積層体の構築およびIntrinsic物性の評価を継続する。 さらに今後は、Intrinsic物性のみならず、構造および物性のダイナミズムに着目して研究を推進する。験より空孔の形状・分布を解明する。化学刺激(ゲスト種の吸着など)による構造と物性の動的変化を解明する。また、活性化前後の単結晶あるいは粉末結晶に対して、加圧あるいは、ずり応力・ねじれ応力を印加することによる結晶形態、結晶構造、およびその物性の動的変化を解明する。特に、非平面系のC3-PIからなる2D-HexNet構造は圧力に対して敏感に可逆的な特性変化を与えると考えられ、非平面-平面の構造変化によるElasticな物性変換が期待できる。
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