公募研究
本年度は、静電場印加の非線形光学効果(第二超分極率γ)の理論解明の基礎となる非対称性のγに対する効果を2サイトモデルを用いて解明することに成功した。従来、未検討の交換積分の効果を明らかにし、さらなるγの大きさの増大する領域(三重項基底状態の第一励起一重項状態、負のγ)の存在を理論により予測した。さらにこの領域に属すると予想される具体的な分子骨格としてアズレン様骨格をもつ縮合多環炭化水素を設計し、高精度量子化学計算を用いてその電子状態とγの計算を行い、我々の理論予測を検証した。また、班内/班間の共同研究においては、(1)巨大双極子をもつ単位ユニットからなるデンドリマーの非線形光学効果(アルブレヒト健)、(2)反芳香族分子及び積層系の開殻性、環電流、非線形光学効果(忍久保)、(3)湾曲分子系の開殻性と非線形光学効果(櫻井)を開始し、成果を得つつある。(2)に関しては、開殻性、芳香族性と非線形光学効果の相関関係を解明し、芳香族性の指標として新たに環電流の計算を行い、検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
開殻分子系の三次非線形光学効果に対する静電場効果の解明のための非対称ジラジカルモデルの解析を行い、新たに交換積分を制御因子とする非線形光学効果の設計原理を明らかにすることに成功した。また、具体系として非対称縮合多環炭化水素を設計し、これが同サイズの閉殻系や対称開殻系に比べて著しいγの増大を示すことを高精度量子化学計算で明らかにすることができた。さらに、開殻性に関連する班内/班間の共同研究も進展しているため。
今回、解析した非対称開殻系の理論モデルに基づき、対称開殻系に静電場を印加することで誘起される非対称性と開殻性、γの関係を高精度量子化学計算を用いて解明する。この結果に基づいて、新しい電場誘起NLOスイッチの設計を行う。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 11件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (86件) (うち国際学会 30件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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