公募研究
代表者らが高純度有機低分子材料において見出した巨大ゼーベック効果について、特にキャリア流と分子振動が運ぶ熱流との間の相互作用に着目し、その発現メカニズムを理解することを目的として研究を行った。H28年度は、巨大ゼーベック効果が発見された分子であるC60フラーレンの部分構造と考えられるスマネンについて熱電特性を評価し、分子の対称性とそれに伴う伝導の対称性の巨大ゼーベック効果への影響を調べた。その結果、電気伝導が極めて一次元的であるスマネンにおいても、最大30 mV/Kの巨大なゼーベック係数が観測された。H27年度の研究において、電気伝導が二次元的な分子についても巨大ゼーベック効果が見られることが確認されていることから、巨大ゼーベック効果は電気伝導の次元性とは無関係であることがほぼ確実となった。また、両者の格子熱伝導率を分子動力学計算によって計算したところ、フラーレンでは結晶構造/アモルファス構造ともに比較的小さな熱伝導率を示すのに対して、スマネンでは結晶構造とアモルファス構造の熱伝導率差が大きく、特に結晶構造では電気伝導が起こりやすい分子スタック方向において熱伝導率が小さいことが判明した。巨大ゼーベック効果は結晶性の高い薄膜の分子スタック方向への電気伝導において現れており、格子熱伝導率が小さいことが巨大ゼーベック効果発現に有利に働く可能性を示唆していると考えられる。平行して、より多くの材料を迅速に評価するための粉末試料用熱電特性評価装置の開発を行った。その結果、粉末を加熱圧縮してペレット化し、その状態のままゼーベック係数・電気伝導率・熱伝導率を同一試料・同一方向で測定することが可能となった。今後、合成化学者との共同研究をより増やして分子構造と巨大ゼーベック効果との相関をさらに解明してゆく。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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化学
巻: 8 ページ: 31-35
http://mswebs.naist.jp/LABs/greendevice/research/example.html