世界をリードする地下素核研究に向けて実験の一層の高感度化を実現するためには、低放射能化技術の強化が必要である。本研究では、メタルスカベンジャーを用いた放射性重金属の吸着手法を開発するため、液体シンチレータ中の金属に対する除去率を評価した。原子核反応を起源とする放射性金属を液体シンチレータ中に溶かしこませるため、ラドンガスのバブリングによって放射性鉛を液中で内部生成させた。メタルスカベンジャーの候補を選定するため、5社12製品の試薬に対してバッチプロセスによる鉛の吸着除去試験を行った。除去率が高いものに対しては試薬を増量した吸着試験も行い、最大約95%の除去率が得られることを確認した。また、実機の純化では液体シンチレータを試薬入りのカラムに連続して送り込むカラムプロセスによる吸着が必要となるため、小規模な装置を構築しカラムプロセスでの吸着性能を評価した。その結果、最も高い吸着性能を示したシリカゲルにアミノプロピル基を付けたメタルスカベンジャーが候補として有力であることが分かった。また、カラムプロセスでは一定流量で処理し続けても除去率は維持されることを確認した。吸着材の使用量あたりの除去率が最大となるように吸着条件を決定すると、94%の除去率が得られた20 mmの吸着層の長さが最適な条件となる。このカラムプロセスを繰り返すと除去率は増大し、最大98%の除去率が得られる。純水と液体シンチレータを撹拌する液液抽出法での純化では最大80%程度の除去率であったことから、メタルスカベンジャーは極性の小さい有機金属に対しても吸着性能を示している可能性がある。また、一定流量で処理し続けても除去率は維持されることを確認した。さらに、液体シンチレータ中の発光材(PPO)の吸着による発光量の低下や不純物混入による光透過率の低下が起こらないことを確認した。
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