研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
15H01030
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石山 智明 千葉大学, 統合情報センター, 准教授 (90616426)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 素粒子実験 / 高性能計算 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「京」コンピュータを用いた大規模シミュレーションを軸として、銀河系の暗黒物質位相空間分布を従来よりも格段によい精度で明らかにすることである。そしてどのようなシグナルが直接検出実験で検知されるべきか、銀河系のどこが暗黒物質間接検出に最も適した場所であるかを調べる。
高赤方偏移で誕生する最小スケールの原始ハローの密度プロファイルは平均的には半径の-1.5乗に比例するものであり、質量が大きくなるにつれ冪が徐々に浅くなる。その物理メカニズムについて調べた。小スケールの原始ハローは質量比の小さい合体が起きると、暴走的緩和によりその構造を大きく変化させる。同じスケールのハローでもこのような合体を経験したものは、経験していないものと比べ密度プロファイルの冪が優位に浅くなることを明らかにした。これは銀河スケール等、より大きいハローでは見られない性質である。結果を査読付き欧文雑誌に投稿した。
また、粒子数5500億、領域 800pc の超大規模宇宙論的N体シミュレーションを京コンピュータ上で実行した。これにより最小の暗黒物質ハローが合体してできる、それより数千~数万倍の大きさのハローの構造を調べることができるようになった。また銀河スケールハロー形成の高分解能シミュレーションを行い、小スケールの物理と大スケールの物理をつなげるための準備を行った。後者を解析した結果を査読付き欧文雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り粒子数5500億、領域 800pc の超大規模宇宙論的N体シミュレーションが終了したが、小スケールハローのサブハローとしての分布の研究が遅れている。一方、予定していなかった小スケール原始ハローの構造進化に関する新しい知見が得られた。これは本研究課題の中核を占める重要な結果である。以上のことから「おおむね順調である」との自己評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、27年度までに実行した、粒子数5500億、領域800pc の超大規模宇宙論的N体シミュレーションから、最大スケールのハローのみを取出し、その中で小スケールの原始ハローがどのように分布しているかを調べる。また宇宙論的シミュレーションでは考慮されていなかったバリオンとの相互作用を調べる。
そして結果を銀河系スケールまで外挿し、銀河ハローにおける最小ハローの分布を定量化する。これまでに得られた最小ハローの進化過程、銀河ハローでの分布、バリオンとの相互作用全てを統合し、太陽系近傍の暗黒物質の密度分布、速度分布といった位相空間分布を従来よりもよい精度で評価する。そしてどの ようなシグナルが直接検出実験で観測されるべきかを予言する。また太陽系近傍だけでなく、銀河系ハローの暗黒物質微細構造を精度良く定量化し、暗黒物質間接検出に最も適した場所を明らかにする。
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