ニュートリノのマヨラナ粒子性の検証のためにCa-48を用いた二重ベータ崩壊がその低バックグラウンド性において有望と期待されている。しかしCa-48の天然存在比は0.2%以下と小さいため、その濃縮技術の開発が切望されている。本研究では濃縮比の高い同位体分離法として期待されるレーザー法に着目し、同位体を選択的にイオン化し回収する方式について、実験的にその性能を明らかにすべく研究を進めた。 27年度は予備的な実験として半導体レーザーによる選択励起とそれに引き続くYAGレーザーの第2高調波による非共鳴的イオン化の実験を行い、同位体選択性は低いものの選択的なイオン化が確認された。 28年度はイオン化用光源を波長可変色素レーザーに置き換え、同位体分離実験を以下の手順で実施した。(1)Ca原子ビームの発生:真空容器内でCaをヒータで加熱、蒸発させ、アパーチャによりコリメートし、原子ビームを形成した。(2)レーザー照射:選択励起用光源である波長423nm近傍で同調可能な半導体レーザー光とイオン化用色素レーザー光を、原子ビームに照射した。(3)同位体選択性の分析:レーザー照射により生成したCaイオンを飛行時間法を用いた質量分析法により同位体の分析を行った。その結果、次のことが判明した。(i)色素レーザー光強度がある程度強い場合、色素レーザー光のみである程度イオン化が起こる。次にCa-48に半導体レーザーを同調して照射すると、Ca-48イオン信号のみが増加し、実験条件では14倍の濃縮が確認された。(ii)色素レーザー光のみによるイオン化を抑えた条件で、半導体レーザー光を照射した場合、Ca-48イオン信号のみならず、他の同位体の信号も増大し、濃縮比が20倍程度に抑えられた。これは、2つのレーザーの協同作用 が原因となっていて、より高い濃縮比を得るためには工夫が必要であることが分かった。
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