暗黒物質の直接探索において、暗黒物質の到来方向を測定することができれば、探索の感度を大幅に向上することができる。本研究では、暗黒物質により反跳される原子核の方向を高圧キセノンガス検出器で測定する可能性を追求する。具体的には、反跳原子核により生じる電離電子とシンチレーション光の両方を測定し、反跳原子核の検出器にかけられた電場に対する方向によって、電子-イオン対の再結合の割合が変化し、電離電子信号とシンチレーション光信号の比が変化することを検証する。 本年度は、再結合の角度依存性測定の原理実証用検出器として10気圧(3cm3)の検出領域を持つTime Projection Chamber(TPC)を製作した。検出器は、有効ガス領域、電離電子ドリフト電極、電離電子により誘起される信号を測定するアノード電極、シンチレーション光を測定するAvalance Photo Diode(APD)からなる。 APDに関しては、液体キセノン用に開発された紫外光に感度のあるものを用いて、量子効率やゲイン、ノイズ等の性能評価を行っている。 製作した検出器にアルファ線源を設置して、電離電子信号とシンチレーション光を測定することに成功した。電離電子-イオン対の再結合の角度依存測定に向けて、ノイズの低減等を行っている。
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