暗黒物質の直接探索において、暗黒物質の到来方向を測定することができれば、探索の感度を大幅に向上することができる。本研究では、暗黒物質により反跳される原子核の方向を高圧キセノンガス検出器で測定する可能性を追求する。具体的には、反跳原子核により生じる電離電子とシンチレーション光の両方を測定し、反跳原子核の検出器にかけられた電場に対する方向によって、電子-イオン対の再結合の割合が変化し、電離電子信号とシンチレーション光信号の比が変化することを検証する。 昨年度製作した10気圧(3cm3)の検出領域を持つTime Projection Chamber(TPC)による測定、評価を行った。検出器は、有効ガス領域、電離電子ドリフト電極、電離電子により誘起される信号を測定するアノード電極、シンチレーション光を測定するAvalance Photo Diode(APD)からなる。241Am線源からのアルファ線を用いて測定を行なった。電離信号とシンチレーション光の電場依存性の測定によりドリフト電場が弱いと電離信号が減り、シンチレーション光が増えるという再結合が起きている事を確認した。また電離信号の持続時間を利用してアルファ線の方向を再構成することで、再結合の方向依存性を評価した。アルファ線の方向に依存して再結合の割合が変化する傾向がみられた。ネオジム磁石を導入することで電場に平行に磁場をかけた場合の測定も行ったが、再結合の方向依存性はむしろ抑制される、という結果が得られた。 また、磁場を加えない場合には、光電子増倍管を使用することができるため、APDにかえて高耐圧で紫外光に感度を持つ光電子増倍管を用いた測定を行った。APDに比べて信号サイズが大きいため、ノイズによる影響の少ない測定が可能となった。
|