10GeV程度以上の質量を持つ重いステライル・ニュートリノがアクティブ・ニュートリノと混合している時、この混合がT2K実験の拡張計画であるT2HK実験、T2HKK実験、およびT2HKに隠岐の検出器を追加した実験において発見できるかどうか、そして、この混合がニュートリノの質量階層性とPMNS混合行列のDirac CP位相の測定にどのような影響を与えるか、を解析した。その結果、PMNS混合行列のDirac CP位相とステライル・アクティブ混合のCP位相の値によっては、この混合が上記実験において発見できる可能性があることを示した。また、この混合は、T2HK実験での質量階層性測定を不可能にする可能性があるが、一方、T2HKK実験ならびに「T2HKに隠岐の検出器を追加した実験」での質量階層性測定には影響しないことが判明した。さらに、いずれの実験においても、ステライル・ニュートリノの混合はDirac CP位相の測定に無視できない影響を与えることを発見した。 次に、タイプ1・シーソー模型において、ニュートリノのDirac湯川行列がクォークの湯川行列と現象論的な関係を持っており、とりわけクォークのCKM混合行列がシーソー機構を通じてニュートリノのPMNS混合行列と結びついている、という可能性について模型に依らない解析を行なった。その結果、クォーク湯川行列のくりこみ群方程式の詳細な解析を通じ、この可能性に基づくPMNS混合行列のDirac CP位相、二つのMajorana CP位相、およびニュートリノ質量の絶対スケールの予言を行なった。 また、TeV質量を持つスカラーのダークマターが寄与してプランクスケールでヒッグス・ポテンシャルが消える可能性についても示した。
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