研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
15H01040
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山本 篤史郎 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334049)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チタン合金 / 蛍光X線ホログラフィー / β安定化元素 / オメガ変態 / マルテンサイト変態 |
研究実績の概要 |
Arアーク溶解炉でTi-Nb合金,Ti-Nb-Ta合金,Ti-Ta合金,Ti-V合金の多結晶棒状インゴットを作製し,そのインゴットを利用して浮遊帯域溶融法により単結晶を作製した.多結晶試料に850℃2時間の熱処理後,更に300℃1時間の時効熱処理を行い焼き入れた.この熱処理条件であれば室温でBCC構造を有するβ相のほぼ単相でその内部に高密度の微細ω相(六方晶)が生成することをX線回折実験ならびに透過電子顕微鏡観察で確かめた.同じ条件で単結晶試料も熱処理して蛍光X線ホログラフィー実験用単結晶試料とした.蛍光X線ホログラフィー法は大型放射光施設SPring-8と高エネルギー加速器研究機構Photon Factoryで行った.ホログラムの記録にはインバース法を用い,5~10種類の入射エネルギーのX線で添加元素の蛍光X線を発生させた.試料を回転させながら蛍光X線の強度変化を測定した. 今年度は,まず,Ti-Nb合金のNb元素近傍の局所構造解析を行った.β相の{111}面ならびにω相の(0001)面と平行に原子面を計算機で再生させると,β相とω相の原子像が概ね再生された.しかし,Nbに最も近いω相の(0002)面では再生されない原子が存在した. そこで,従来から考えられているω相の構造について蛍光X線ホログラムの理論計算を行い,その理論計算ホログラムから原子像を再生すると,実験では再生されない原子像が再生された.つまり,実験結果はNb近傍のω相の原子構造が,現在知られているω相の構造と異なることを意味している.実験結果から得られたNb近傍の構造は,なるべくβ相の構造を保とうとしており,Nbが典型的なβ安定化元素であることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要なTi-Nb合金,Ti-Nb-Ta合金,Ti-Ta合金Ti-V合金の多結晶棒状インゴットを作製し,そのインゴットを利用して浮遊帯域溶融法により単結晶を育成した.多結晶試料に850℃2時間の熱処理後,更に300℃1時間の時効熱処理を行い焼き入れた.育成した試料の断面組織をエッチングしたところ,Ti-Nb合金とTi-V合金は試料全体が単結晶であり,Ti-Nb-Ta合金,Ti-Ta合金が多結晶であるが個々の結晶粒が5mmほどあり,蛍光X線ホログラフィー実験が可能であることがわかった.Ti-Nb合金単結晶試料についてはホログラム測定と原子像再生ならびに解析が完了し,その結果の一部を論文として投稿した. Ti-Nb-Ta合金とTi-V合金の単結晶試料についてはホログラム測定を終了し,おおよその原子像再生が可能であることを確認した.Ti-Ta合金については単結晶試料の育成が終わったところである.
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今後の研究の推進方策 |
まず,Ti-Ta合金単結晶試料の蛍光X線ホログラフィー実験を行う.また,Ti-Nb-Ta合金,Ti-V合金,Ti-Ta合金の実験結果の解析を行い,β安定化元素の種類によってその近傍の局所構造の相違点を明らかにし,最も効果的にβTi合金を得るための元素を明らかにする.また,明らかになった添加元素近傍の局所構造を利用して第一原理計算を行い,マルテンサイト変態温度付近におけるβTi合金の弾性定数の低下に関する知見を得られないか試みる. 更にβTi合金で得られた成果を元に,添加元素が材料特性を大きく左右するAl合金,特に,ジュラルミン合金・超ジュラルミン合金について添加元素近傍の局所構造を調査する.
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