研究実績の概要 |
100原子以下の金属クラスターは,構成原子の総原子数,種類およびクラスターの幾何構造により多様な電子状態をとるため,バルク物質や対応する原子では見られない特異な性質を示す.また担持金属クラスターでは担体―金属クラスター界面の形成による新たな機能の創出が期待できる.しかし,幾何構造や界面構造を決定する一般的な手法がないため,担持金属クラスターの触媒作用は完全に理解されていない.そこで本研究では透過型電子顕微鏡(TEM)により担持金属クラスターの3D構造を評価し,触媒特性との関係を調べた. 平成28年度では,前年度で得られたベンジルアルコール酸化反応活性に対する担持金クラスターのサイズ・組成依存性を幾何構造の点から考察した(Chem. Rec. 16, 2338-2348 (2016)).さらに,透過型電子顕微鏡を用いた電子線イメージングにより,配位子で保護された金属構造体の構造を原子レベルで評価した(J. Phys. Chem. C, in press.). ベンジルアルコール酸化反応に対して活性の高い100原子以上の金クラスターでは正二十面体構造等の結晶性の粒子が観察されたが,低活性の100原子以下の金属クラスターは不定形であった.構造の違いが酸化反応活性に寄与することが示唆された. 担持Au25クラスターにPdを1原子ドープした触媒を調製し,ベンジルアルコール酸化反応に対するPd1原子ドープ効果を調べた.結果として,ドープしたPdはクラスターと担体の界面に存在し,Pdから表面の金への電子供与がベンジルアルコール酸化反応の活性向上の要因であることを見出した. 高分解能TEMを用いることで金ナノロッドの幾何構造を原子レベルで観察することに成功した.構造解析の結果,直径1.8 nmの金ナノロッドはfcc構造を持つ金クラスターが双晶面を介して連なった連結体であることを明らかにした.
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