公募研究
ペロブスカイト型酸窒化物SrTaO2Nはバルクでは常誘電体だが、正方晶歪みを印可したエピタキシャル薄膜では室温強誘電性を示すことから、極性反転可能な光電変換素子などへの応用が期待されている。本研究では、SrTaO2Nの強誘電性の起源として、TaO4N2八面体のアニオン配列に注目し、正方晶歪みとの関係の解明に取り組んだ。H27年度までの成果として、正方晶歪みによって強誘電性の準安定なtrans型配列が安定化することを第一原理計算で明らかにした。さらに、SrTaO2N/SrTiO3より大きな正方晶歪みを有するSr0.5Ca0.5TaO2N/SrTiO3の合成に成功し、直線偏光X線吸収(LPXAFS)測定によって、アニオンサイト(axial/equatorial)の占有率にOとNで偏りがあることを見出した。H28年度は、Sr/Ca比を振って正方晶歪みを連続的に変えたSr1-xCaxTaO2N/SrTiO3およびSr1-xCaxTaO2N/DyScO3を作成し、正方晶歪みとアニオンサイト占有率の関係を評価した。その結果、正方晶歪みの印可によって窒素のaxialサイト占有率が単調増加し、最大で約50%に達することを明らかにした。また、STEM-EELSによるサイト選択組成分析でも占有率を評価し、定量的に一致する結果を得た。次に、このサイト占有率の変化がtrans型配列とcis型配列の配向変化(秩序化)のいずれに起因するかを明らかにするために、第一原理計算でシミュレーションしたLPXAFSスペクトルと比較した。実験で得られたLPXAFSスペクトルの形状はtrans型配列のシミュレーション結果と良い一致を示し、正方晶歪みに伴うtrans型のアニオン配列の形成が確認された。以上より、SrTaO2Nエピタキシャル薄膜の強誘電性はtrans型アニオン配列に起因することが実証できた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
ACS Nano
巻: 11 ページ: 3860-3866
10.1021/acsnano.7b00144
J. Mater. Chem. C
巻: 5 ページ: 1798-1802
10.1039/C6TC04160D
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5317/