研究実績の概要 |
金属元素(Ca, Sr, Ba, Laなど)を適切にドーピングしたタンタル酸塩ペロブスカイト(NaTaO3, KTaO3など)は世界最高活性の水分解光触媒となる。研究代表者らは(1)ドーピングによる電子-正孔再結合の抑制が活性向上の主要因であること(2)ペロブスカイト格子のB-site置換が再結合抑制の鍵となることをみいだしてきた。 本研究では再結合抑制メカニズム解明の基礎としてドーピング元素の3D構造を解析する。平成27年度は(1)蛍光X線ホログラム解析の対象となる金属ドーピングNaTaO3単結晶膜を合成するとともに(2)NaTaO3光触媒微粒子をエッチングしてドーピング元素濃度の断面分布と再結合抑制の関係を解析した。 研究項目(1)SrTiO3(格子定数0.391 nm)単結晶をテンプレートとしてKTaO3(同0.399 nm)エピタキシャル膜を水熱合成した既報にならって、SrTiO3およびLaAlO3(同0.379 nm)の(100)単結晶基板上にKTaO3膜とNaTaO3(同0.393 nm)膜を合成した。格子整合性の高いSrTiO3を基板としたとき正しい組成(NaまたはK:Taがおよそ1:1)の膜が得られた。ホログラム測定に際してSrTiO3基板からの蛍光X線が妨害とならぬように、ドーピング元素をBaに絞って合成条件を検討した。 研究項目(2)固相合成法によってSr(5 mol%)をドーピングしたNaTaO3光触媒微粒子をHF水溶液でエッチングした。蛍光X線とX線光電子分光で測定したSr濃度がエッチング時間に対して不連続に減少したことから、Sr濃度と結晶構造が異なるシェル(厚さ数 nm)がコアを覆う断面構造を結論した。赤外吸収分光で定量した光励起電子量はSrドーピングによって130倍に増え、エッチングによってシェルを除去するとさらに40%増大した。
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