公募研究
Ca1-xPrxFe2As2が示す49 KのTcは鉄系122型の中で最も高い値であるが、一方でその化合物が示す超伝導体積分率はわずか数%にとどまる。走査トンネル顕微分光の結果を参照すると、CaサイトにドープされたPr原子と同じ数の欠陥が原子像に現れており、その周囲でのみ超伝導ギャップが発達しているように見える。この結果は、Ca1-xPrxFe2As2の高温超伝導がCaサイトにドープされたPrの周りでのみ局所的に発現していることを示唆する。本研究では、蛍光X線ホログラフィーの手法によりPr周りの局所構造を調べ、超伝導増強因子の抽出を試みる。フラックス法により、3x3x0.03 mm3程度の単結晶試料を育成した。EDXでPr量(x = 0.10)を分析し、磁化測定でTc (40 K)と超伝導体積分率(約5%)を調べ、狙い通りの試料ができていることを確認した。さらに、単結晶X線回折でシングルグレインの結晶であることを確認したのち、SPring-8のBL13XUに試料を持ち込み、蛍光X線ホログラフィーの実験を行った。Pr周りの特徴を明らかにするため、Pr LαとCa Kαの蛍光X線ホログラムを測定した。温度は室温、入射X線エネルギーは6.5 keVから11.5 keVまで0.5 keVおきとした。原子像を再生した結果、Caの周りでは、Ca、Fe、Asの各原子が所定のサイトに観測された。一方、Prの周りでは、Ca周りの構造と様子が異なることがわかった。今のところ、原子サイト以外の場所にゴーストが見えており、Pr周りの局所構造について正確に議論するには、データのS/N比を向上させる必要がある。今後、精度を上げた測定を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
蛍光X線ホログラフィーの実験に使用することのできる大型の単結晶試料を育成することができた。実際に蛍光X線ホログラフィーの実験を行い、CaとPrの周りの原子像を再生することができた。さらに、Caの周りとPrの周りの局所構造が異なることを示唆する結果が得られた。今後測定データのS/N比を改善する必要があるが、そのための具体的な案は既にある。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
測定データのS/N比を改善するために、長時間測定、分光結晶の位置調整、検出器周りのチェックなどを行い、精度を上げた実験を進める。そして、Pr周りの局所構造を精密に調べ、超伝導増強因子を抽出する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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