酵素反応は,酵素活性サイトに基質・金属イオンが結合して引き起こされる.この様な酵素反応機構を理解するには,酵素活性サイトの構造に加え,反応中の構造変化を明らかにすることが必要不可欠である.本研究では,酸化ヌクレオチド加水分解酵素について,1) 蛍光X線ホログラフィーに適した大型結晶の調製条件を確立する.2) タンパク質結晶の蛍光X線ホログラフィーを確立し,酸化ヌクレオチド加水分解酵素の活性サイトの構造を決定する.3) 時分割X線結晶構造解析による反応過程の可視化を行う.これらの結果から,蛍光X線ホログラフィーによる活性サイト構造とX線結晶解析の活性サイト構造の関係,さらには,ホログラフィーによって得られた局所的な構造と反応機構の関係を明らかにする. 本年度は,1) 蛍光X線ホログラフィーに適した大型結晶の調製,2) 蛍光X線ホログラフィーの初期的な実験, 3) 時分割X線結晶構造解析を行った.シーディング法による酸化ヌクレオチド加水分解酵素の大型化を行い,最大で長辺が500 μmを超える結晶を再現性良く調製した.SPring-8のBL39XUにχサークルと結晶冷却装置を導入し,これらの結晶を用いた蛍光X線ホログラフィーの予備的な実験を行った.さらに,結晶へのMg2+の浸漬を反応開始とした時分割X線結晶構造解析を行い,最終的に活性部位にMg2+が結合していき,基質が加水分解される過程を観察した.
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